フランスのOCORAレーベルは世界各地の民族音楽や伝統音楽の音源を提供していることで知られているが、その録音の質の高さにおいても定評がある。今回紹介するのは、アラブ古典音楽で使われる葦笛のネイ(またはナーイ)と、アンデスの葦笛であるケーナとのデュエットによる「ネイ&ケーナ 葦の会議」である。82年の録音で、リリースは84年だ。
演者はネイがクジ・エルグナー、ケーナがザビア・ベレンガー。レコーディング場所はフランス南部のプロヴァンス地方にあるセナンケ僧院だ。パフォーマーに関しての予備知識は無いが、2人ともかなりのテクニシャンであることが分かる。同じ葦笛といっても、ネイとケーナは形状も音階も違うし、それぞれの楽器が使用される音楽自体も異なる。ところが彼らはその“壁”を易々と乗り越え、独自のサウンド世界を演出している。
曲はすべて即興で、アプローチとしてはジャズのアドリブに近いが、テイストとしては民族音楽と現代音楽のミックスのような高踏的なものだ。それでいて、聴き手の神経を逆撫でするようなエキセントリックさは皆無で、極上のヒーリング・ミュージックのような様相を呈している。
音質は素晴らしく、広々とした音場の中で、2本の葦笛は絶妙の定位を見せる。そしてオフマイクで捉えたホールエコーが圧倒的だ。上下前後左右とサウンドは拡散し、並々ならぬスケール感を醸し出す。再生装置の質が上げるほどに音の粒立ちが“可視化”されると思われ、オーディオシステムのチェックにはもってこいの優秀録音だ。
元々はピアニストであったフランスのモーリス・ギが70年に結成した、古楽器合奏グループのル・ミュジシャンズ・ド・プロヴァンスのアルバム「プサルテリオンの芸術」は、再生すると部屋の空気が変わってしまうような典雅なオーラに包まれた良作だ。録音は73年から81年にわたって7回おこなわれ、ディスクのリリースは81年である。
彼らが演奏するのは、12世紀から17世紀にかけて作曲された南フランスに伝わる器楽曲で、はっきり言ってどれも馴染みのない曲ばかりだ。しかし、どれもしみじみと美しい。哀愁を伴うメロディと、巧みなハーモニー。各プレーヤーの妙技にも感心するしかない。使われている楽器はギターやリコーダー等の現在でもよく使われているものから、タンブランやクルムホルン、そしてアルバムタイトルにもあるプサルテリオン(プサルタリーともいう。木箱にピアノ線を張った弦楽器で、通常は24弦だが、ここでは16弦のものが起用されている)といった珍しい古楽器も駆使されており、そのユニークな音色は飽きることがない。
そして録音状態だが、かなり良い。レコーディング場所やその環境は不明だが、ホールエコーが効果的に捉えられている。年月を置いての複数回の収録なのでナンバーによって響き方は違うものの、明確な楽器の定位や不必要なエッジを立たせない音色の再現など、いずれも細心の注意が払われている。レーベルはフランスのアリオンで、他にも優秀録音は多く、機会があればまた他のディスクも紹介したい。
イギリスの2人組ユニットであるエヴリシング・バット・ザ・ガールといえば、90年代にエレクトロニック・ミュージックの要素を積極的に取り入れハウス・サウンドで一世を風靡したものだが、デビュー当時はアコースティックな展開を見せ、一定の評価を得ていた。私が所有しているのは、84年にリリースされた彼らのデビューアルバム「エデン」である。
トレイシー・ソーンとベン・ワットが作り出す楽曲はいずれも肌触りが良く、そして何よりオシャレだ。聞くところによると、その頃日本では“トレンディな音源に敏感なOL層”向けに売り出されていたという(笑)。録音はびっくりするほど上質というわけではないが、ポップス系ではかなり良い方に属する。レンジは十分に確保され、ヴォーカルは自然で、特定帯域でのおかしな強調感も無い。
なお、このディスクを入手した理由というのは、何とレコード店で“売り込み”を掛けられたからだ。リリース元としてもプッシュしたいサウンドであったらしく、ショップに派遣されていた(と思われる)レコード会社のスタッフからの猛チャージで、仕方なく(?)買ってしまったというのが実情。しかし結果は良好で、今でも自室のレコード棚にある。なお、ジャケットの材質とデザインは秀逸で、部屋に飾っていてもおかしくない。
演者はネイがクジ・エルグナー、ケーナがザビア・ベレンガー。レコーディング場所はフランス南部のプロヴァンス地方にあるセナンケ僧院だ。パフォーマーに関しての予備知識は無いが、2人ともかなりのテクニシャンであることが分かる。同じ葦笛といっても、ネイとケーナは形状も音階も違うし、それぞれの楽器が使用される音楽自体も異なる。ところが彼らはその“壁”を易々と乗り越え、独自のサウンド世界を演出している。
曲はすべて即興で、アプローチとしてはジャズのアドリブに近いが、テイストとしては民族音楽と現代音楽のミックスのような高踏的なものだ。それでいて、聴き手の神経を逆撫でするようなエキセントリックさは皆無で、極上のヒーリング・ミュージックのような様相を呈している。
音質は素晴らしく、広々とした音場の中で、2本の葦笛は絶妙の定位を見せる。そしてオフマイクで捉えたホールエコーが圧倒的だ。上下前後左右とサウンドは拡散し、並々ならぬスケール感を醸し出す。再生装置の質が上げるほどに音の粒立ちが“可視化”されると思われ、オーディオシステムのチェックにはもってこいの優秀録音だ。
元々はピアニストであったフランスのモーリス・ギが70年に結成した、古楽器合奏グループのル・ミュジシャンズ・ド・プロヴァンスのアルバム「プサルテリオンの芸術」は、再生すると部屋の空気が変わってしまうような典雅なオーラに包まれた良作だ。録音は73年から81年にわたって7回おこなわれ、ディスクのリリースは81年である。
彼らが演奏するのは、12世紀から17世紀にかけて作曲された南フランスに伝わる器楽曲で、はっきり言ってどれも馴染みのない曲ばかりだ。しかし、どれもしみじみと美しい。哀愁を伴うメロディと、巧みなハーモニー。各プレーヤーの妙技にも感心するしかない。使われている楽器はギターやリコーダー等の現在でもよく使われているものから、タンブランやクルムホルン、そしてアルバムタイトルにもあるプサルテリオン(プサルタリーともいう。木箱にピアノ線を張った弦楽器で、通常は24弦だが、ここでは16弦のものが起用されている)といった珍しい古楽器も駆使されており、そのユニークな音色は飽きることがない。
そして録音状態だが、かなり良い。レコーディング場所やその環境は不明だが、ホールエコーが効果的に捉えられている。年月を置いての複数回の収録なのでナンバーによって響き方は違うものの、明確な楽器の定位や不必要なエッジを立たせない音色の再現など、いずれも細心の注意が払われている。レーベルはフランスのアリオンで、他にも優秀録音は多く、機会があればまた他のディスクも紹介したい。
イギリスの2人組ユニットであるエヴリシング・バット・ザ・ガールといえば、90年代にエレクトロニック・ミュージックの要素を積極的に取り入れハウス・サウンドで一世を風靡したものだが、デビュー当時はアコースティックな展開を見せ、一定の評価を得ていた。私が所有しているのは、84年にリリースされた彼らのデビューアルバム「エデン」である。
トレイシー・ソーンとベン・ワットが作り出す楽曲はいずれも肌触りが良く、そして何よりオシャレだ。聞くところによると、その頃日本では“トレンディな音源に敏感なOL層”向けに売り出されていたという(笑)。録音はびっくりするほど上質というわけではないが、ポップス系ではかなり良い方に属する。レンジは十分に確保され、ヴォーカルは自然で、特定帯域でのおかしな強調感も無い。
なお、このディスクを入手した理由というのは、何とレコード店で“売り込み”を掛けられたからだ。リリース元としてもプッシュしたいサウンドであったらしく、ショップに派遣されていた(と思われる)レコード会社のスタッフからの猛チャージで、仕方なく(?)買ってしまったというのが実情。しかし結果は良好で、今でも自室のレコード棚にある。なお、ジャケットの材質とデザインは秀逸で、部屋に飾っていてもおかしくない。