元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「違う惑星の変な恋人」

2024-02-09 06:34:00 | 映画の感想(た行)
 この映画の評判がけっこう良いことに、正直驚いている。個人的には、本作の中身に面白い箇所を何一つ見出せない。それ以前に、どうしようもなく作りが古いのだ。こんなタッチのシャシンは80年代から90年代前半にかけていくつも目にしたように思うし、変化球を狙って悦に入っているような送り手のスタンスも、ひょっとして共通しているのかもしれない。とにかく、評価する気には全くなれない映画だ。

 美容室の店長のグリコは従業員のむっちゃんとは余所余所しい関係だったが、音楽の趣味が合うことが分かり仲良くなる。ある日、グリコの元恋人モーが店に現われるが、彼は何とかヨリを戻したいと思っているらしい。一方、グリコはシンガーソングライターのナカヤマシューコのライブでプロモーターのベンジーと久々に会ったところ、同行していたむっちゃんはベンジーに一目ぼれしてしまう。しかし、ベンジーはグリコに惹かれていたのだった。映画はこの4人の複雑な恋愛模様を描く。



 とにかく、すべてが“思わせぶり”なのだ。まず、互いに裏を取ろうとするような恣意的な会話が気に食わない。何かあると臭わせて、実は中身は大したことはない。つまらない勘ぐりを気の利いた言い回し(みたいなもの)で粉飾し、微妙にマウントを取ろうとする。こいつらのセリフを聞いていると、ストレスが溜まるばかり。こんな連中がもし実際近くにいたら、たぶん100メートルは距離を置くだろうね(笑)。

 加えて、無駄に長回しが多い。切迫した背景があってのワンシーン・ワンカットではなく、ただカメラを切り替えずに撮しているだけ。弛緩した空気しか流れない。だいたい、グリコの名字が江崎で、モーは牛山だというのだから、実に寒々としたセンスだ。こんな底の浅い方法論では骨太なドラマ性など獲得できるわけもなく、中盤以降は観ていて眠気との戦いに終始。とはいえ、昨今の若い観客にとっては斯様な(一風変わった)エクステリアは新鮮に映るのだろう。監督の木村聡志(私は初めて聞く名前だ)にとっては満足出来る評価ではなかっただろうか。

 顔を知っているキャストは筧美和子と中島歩だけで、綱啓永に莉子、村田凪、金野美穂、坂ノ上茜といった初見の出演陣には存在感もパフォーマンスも見るべきものが無い。それにしても、ラストの処理は意味不明で蛇足気味。作っている側は、これでセンスが良いとでも思ったのだろうか。

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