元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「最後まで行く」

2023-06-16 06:20:07 | 映画の感想(さ行)
 物語の“掴み”はオッケーで、前半はけっこう面白い。だが、中盤を過ぎるとヴォルテージが低下して次第にどうでも良くなってくる。さらに終盤は腰砕け気味。題名とは裏腹に、緊張感の持続が“最後まで行かない”映画である。2014年製作の同名の韓国映画のリメイクとのことだが、私は元ネタは観ていない。だからどの程度オリジナルの要素を引き継いでいるのか分からないが、少なくとも海外のシャシンを再映画化する際は“国情”に合わせた作りにして欲しいものだ。

 12月29日の夜、埃原署の刑事である工藤祐司は母の危篤の知らせを受け、雨の中で車を飛ばしていた。しかし途中で妻から電話があり、母が息を引き取ったことを知らされる。そしてその瞬間、車の前に若い男が飛び出してきてはねてしまう。男は即死しており、何とか揉み消そうと考えた工藤は遺体を葬儀場まで運び、母の棺桶に入れて母と一緒に焼却しようとする。ところが工藤のスマホに、この一件を目撃したというメッセージが入る。送り主は県警本部の監察官である矢崎で、彼が工藤の所業を見掛けたのは別のヤバい案件に手を染めている最中だったのだ。こうして悪徳警官同士の果てしないバトルが展開することになる。



 刑事が切羽詰まった状況で死亡事故を起こし、その後始末に汲々としているところに別の悪党が無理難題を吹っ掛けてくるという設定は悪くない。そこから先は中盤までほぼ一直線であり、いくつかの瑕疵は見受けられるとはいえ、勢いで乗り切ってしまう。同じ時制を立場を変えて描くという手法も効果的だ。

 しかし、矢崎が捨て鉢な行動に出る後半に入ると、あり得ない筋書きがてんこ盛りになり観る側のヴォルテージも下がってくる。終盤近くの扱いに至っては、何かの冗談としか思えない。もしかする元ネタの韓国作品では無理のない環境条件(?)になっているのかもしれないが、日本映画でこれでは納得できない。

 藤井道人の演出はまあまあの線だが、それ以前に脚本を詰める必要がある。とはいえ主役の岡田准一と綾野剛は楽しそうに悪党を演じており、彼らのファンは満足できるかもしれない。他にも磯村勇斗や駿河太郎、杉本哲太、柄本明とけっこうそれらしい面子は揃っており、配役は問題ないだろう。

 だが、工藤の妻に扮する広末涼子だけはどうしようもない。なぜ彼女のような演技力に難のある者がコンスタントに映画に出られるのか、邦画界の七不思議のひとつだろう(前にも書いたが、あとの六つは知らない ^^;)。もっとも、最近では私生活での行動もクローズアップされているようなので、いよいよ彼女のキャリアも終焉に向かうかもしれない。

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