元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

ボストン・テラン「神は銃弾」

2008-01-18 06:36:42 | 読書感想文
 カルト教団に元妻を殺され、さらに娘を拉致された男の決死の追撃行を描くクライム・アクション編。作者のテランはこの作品により英国推理作家協会新人賞を受賞している。

 アメリカ中西部の荒涼とした雰囲気が魅力的だが、何より主人公と行動を共にする元カルト信者の女の造形が圧倒的に素晴らしい。蓮っ葉でいながら純情、極限状態の中で主人公と衝突しながらも心を通わす場面はグッときてしまう。そしてモノローグのひとつひとつが滅茶苦茶かっこいい。もしも映画化されるのなら(実際そういう話が進行中だが)、ハリウッドの一線級の女優たちがこの役を取り合うことだろう。

 ターゲットになるカルト教祖の異常さと強大さも十分すぎるほどに描かれており、敵役として申し分ない。終盤の決着の付け方が幾分物足りず、純文学の香りが強い文体も併せて、読む者によっては評価が分かれるかもしれないが、最後まで引き込まれるパワーには誰しも瞠目させられるだろう。読んで損はない。

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