元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ザ・ハント」

2020-11-27 06:21:56 | 映画の感想(さ行)

 (原題:THE HUNT)出来自体は大したことはないのだが、設定はかなり興味深い。特に、敵役の描き方にはこれまで見られなかった独創性が感じられる。そのため本国では物議を醸したらしいが、銃乱射事件が発生したことを受けての公開延期という事態にも見舞われたとかで、いろいろと訳ありのシャシンであることは間違いない。

 12人の男女が森林地帯の中で目覚める。彼らは年齢や職業もさまざまで、互いに面識も無い。そして、ここはどこなのか、どうやって来たのかもわからない。目の前にあるのは巨大な木箱だけ。こじ開けてみると、一匹の豚と多数の武器が出てきた。一同が困惑していると、突然銃弾が飛んでくる。何者かが彼らの命を狙っているらしい。逃げ惑う彼らが思い当たったのは、金持ちが一般市民を殺戮する“マナーゲート”という狩猟ゲームだった。ネット上だけの噂と思われていたが、実在したらしい。かくして、必死のサバイバル劇が始まった。

 こういう“人間狩り”を描いた映画は過去に何本も存在したが、その多くがイカレた連中(たいてい富裕層)の蛮行を取り上げていた。本作も悪者どもは金持ちなのだが、ユニークなのはこいつらが過激な環境テロリストあるいは反レイシズム主義者である点だ。KKK団のような右派のレイシストではなく、リベラル陣営が手前勝手な正義感により狼藉に及ぶという図式が面白い。

 どこの国でもそうだが、ウヨクもサヨクも頭が悪いという点では一緒だ。だから左派がバカなことをやるのも何ら不思議ではないのだが、彼の国では珍しく思われるのだろう。しかも、昨今(アカデミー作品賞の新基準などの)行き過ぎたリベラリズムが米映画界を“侵食”している中、この映画を観て留飲を下げる向きもあるのだろう。

 さて、映画の序盤でいかにも物語の中心人物になりそうな若い男女があっさりと消されたり、12人の中になぜか戦闘能力が極端に高い者が含まれていたり(その理由も示される)と、面白い御膳立ては見られる。また、誰が敵か味方か分からない展開も悪くない。しかしながら、中盤以降は凡庸なサスペンス劇になる。ラストの敵の首魁とのバトルは、あまりにもショボくて見ていられない。

 そもそも12人が送り込まれたのが東欧某国で、(すべてがヤラセとも思えない)中東から来た難民のキャンプなんかも映し出されるというのは、この“マナーゲート”というのは随分と“穴”があるのだと思わざるを得ない。クレイグ・ゾベルの演出はテンポは悪くないが、ドラマの盛り上げ方に関しては不満が残る。

 ベティ・ギルピンにエマ・ロバーツ、アイク・バリンホルツ、そしてヒラリー・スワンクといったキャストは可もなく不可もなし。ただし上映時間は1時間半ほどだし、前述の設定の面白さもあって、観て損したという気にはあまりならない。

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