元・副会長のCinema Days

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「ザ・ファイブ・ブラッズ」

2021-06-11 06:28:39 | 映画の感想(さ行)
 (原題:DA 5 BLOODS )2020年6月よりNetflixより配信。評判が良いみたいなので観てみたが、監督がスパイク・リーだということが判明した瞬間、悪い予感がした。案の定、要領を得ない出来に終わっている。思えば、この監督の作品で水準を大きくクリアしているのは初期の数本だけだ。どうしていまだに演出のオファーが絶えないのか、個人的には解せない。

 4人の黒人の退役軍人が、かつての戦場であるベトナムを訪れる。目的は戦友ノーマンの遺骨回収、そしてジャングルの中に隠した、大量の金塊の奪取だ。勝手に付いてきたメンバーの一人の息子や、現地ガイド、および地雷撤去のために現地入りした平和活動グループも交えた一行は何とか目当てのものを見つけるが、金塊を横取りしようとする武装グループの襲撃を受ける。

 公民権運動をはじめとする米社会における黒人層の地位を示すニューフィルムなどが数多く挿入されるが、それがベトナム戦争とどう結び付くのか、よく分からない。確かにベトナムに従軍した米兵士の約3割が黒人であるというが、本作のストーリーである宝探しと活劇の直接的な背景になるかというと、かなり無理がある。

 元々このネタは白人のベトナム帰還兵という設定で脚本が書き上げられ、オリヴァー・ストーン監督が映画化する予定だったらしい。それがスパイク・リーのもとに企画が持ち込まれた際に、黒人差別問題を絡めた話に移行したということだ。居心地の悪さはそこから来ているとも言える。

 演出のテンポは良くない。BLMをはじめベトナムの旧宗主国のフランスに対する言及、登場人物の一人が負っている戦争の後遺症(PTSD)と家族関係や、現地の女性との間に出来た子供の問題、ベトナム社会の剣呑な雰囲気(ただし、描き方は中途半端)などのモチーフが目一杯詰め込まれ、ストーリー進行が遅くなった挙げ句に2時間半を超える尺になってしまった。時制によってスクリーンのサイズが変わるのも愉快になれない。

 ここは単純に、金塊をめぐる悪者たちとの争奪戦を、かつての戦場で何があったのかというミステリーをバックに粛々と映画にすれば、それなりの娯楽編に仕上がったはずだ。上映時間も2時間以内に収められただろう。デルロイ・リンドーにクラーク・ピーターズ、ノーム・ルイス、イザイア・ウィットロック・Jr、ジャン・レノ、そしてチャドウィック・ボーズマンという配役は悪くないが、あまり印象に残らない。

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