元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから」

2021-06-07 06:51:28 | 映画の感想(ら行)
 (原題:MON INCONNUE)ファンタジー仕立てのラブコメという、私が最も苦手とするジャンルに属する映画ながら(笑)、巧みな切り口と語り口によって楽しく観ることが出来た。もっとも、ラストの処理は大いに不満だが、それを抜きにしても見応えのあるシャシンであることは間違いない。

 パリに住むラファエルとオリヴィアは高校生時代に知り合い、長じて結婚する。だが、作家として大成したラファエルに対し、ピアニスト志望だが目が出ずに小さなピアノ教室の講師に甘んじているオリヴィアの間には、大きな溝が出来ていた。離婚を覚悟したラファエルがある朝目覚めると、そこは彼がしがない中学教師で、オリヴィアが人気ピアニストという立場が逆転している世界だった。しかも、彼女はラファエルに会ったこともなく、別の甲斐性のありそうな男との結婚も控えている。オリヴィアをもう一度振り向かせれば元の世界に戻れると信じたラファエルは、友人フェリックスの助けを得て奔走する。



 冒頭、SF大作のような映像が現れて驚かされるが、これはラファエルが執筆している小説の一場面だ。その小説が切っ掛けになって彼はオリヴィアと仲良くなり、結婚してからも2人はしばらくは幸せだったが、呆気なく終焉を迎えようとするくだりが一気に語られる。そしてその原因も短時間で明示され、まさに“掴みはオッケー”だ。

 別の世界に転生してから、彼はどうしてオリヴィアと上手くいかなくなったのかを悟り、それをリカバリーしようとするのも定石通り。ただし、よくある“パラレルワールドもの”ながら、けっこう描き方は辛辣で容赦ない。ここは恋愛至上主義のフランスの映画らしく、色恋沙汰に関するいざこざには妥協を許さない。

 終盤の展開はその延長線上にあるもので、頭の中では納得しても少しはライトな方向に収めてほしかったというのが本音だ。しかしながら、全編に散りばめられたギャグは暗くなりそうなストーリーを良い按配で中和してくれる。その“お笑い部門”を担っているのがフェリックスで、彼が出てくると画面が弾んでくる。特に、卓球が得意な彼のウェアの胸元に“南葛”という漢字が入っていたのには笑った(言うまでもなく、南葛はキャプテン翼の出身校だ)。

 ユーゴ・ジェランの演出は緩急をつけた達者なもので、ダレることはない。ラファエルを演じるフランソワ・シビルのワイルドな二枚目ぶりも良いが、オリヴィアに扮するジョセフィーヌ・ジャピの魅力には参ってしまった。とにかく、物凄く可愛い。フェリックス役のバジャマン・ラベルネの芸達者なコメディ演技も一見の価値はある。ニコラ・マサールによる撮影も言うことなしだ。

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