元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」

2007-02-25 07:43:43 | 映画の感想(は行)

 これは企画の勝利だ。タイトルのロゴが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に似ているが、あの作品がタイムトラベルものとしては当時“穴場的題材”であった(主人公の両親が関わる)数十年前への時間旅行を扱っていたのと同様に、この映画は17年前のバブル時代へのタイムリープといった、そんなに大昔ではないけどあまり振り返られない時代をネタにした、この手のシャシンにしては非常に“ニッチ”な線(もちろん、観客は40代以上限定)を狙っているのが天晴れである。

 カネが余って仕方が無く、夜な夜なディスコではボディコンファッションで扇振りながら踊るねーちゃん達と、DCブランドに身を包んだ野郎どもで溢れかえり、地価も株価も際限なく上がる、誰もが酩酊状態だった時代。そこに行方不明の母を捜すために送り込まれた娘を演じるのが広末涼子だというのが面白い。広末自身が地に足が付いていない泡沫的な存在感のタレントであることが効果的。これが演技力に定評のある若手女優が演じていたら嘘臭くなっていたところだ(笑)。

 当時の風俗と現在とのギャップも笑える素材が満載。阿部寛と薬師丸ひろ子も乗りまくって演じている。アクション場面はショボく、演出テンポも悪いが、それがどうした。このテーマに目を付けた馬場康夫監督&ホイチョイ・プロダクションは偉い。

 さらに興味深いのは、バブルがはじけた原因を理詰めに考察していることだ。経済マクロと金融政策の関係性も明確に示される。そのへんの経済雑誌よりは数段分かりやすい。考えてみれば、バブルが終焉して17年、それ以後日本経済はずっと低空飛行を続けており、今の若い者は我が国が景気が良かった時代のことをまったく知らないのである。これはある意味コワいことだ。

 マスコミは景気が回復したと囃し立てるが、一般庶民にはほとんど実感がない。若い者が認識する“好景気”というのは大企業経営者とその取り巻きがトクをしていることであり、その経営者連中は中長期的ヴィジョンなど眼中になく、目先の儲けにしか興味がない。“公”を忘れた私利私欲の追求こそが真の“社会的成功”であるという風潮が蔓延してしまった。グローバル・スタンダードとやらを無批判に受け入れたツケだろうか。先に見えるのがジリ貧の縮小均衡だけなら、世の中が殺伐となっていくのは当然のことである。

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