元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「トイレの花子さん」

2009-05-19 06:35:08 | 映画の感想(た行)
 95年作品。松竹が東宝のヒットシリーズになる「学校の怪談」に対抗して作ったような、学校の怪異談である。監督は「きらきらひかる」などの松岡錠司。小学校周辺で起きる連続児童殺人事件。3年生のなつみ(前田愛)のクラスで行われたコックリさんの占いによると犯人は“トイレの花子さん”で花子は明日やってくるという。そして翌日、なつみの兄のクラスに優等生の冴子(河野由佳)が転校してくる。彼女が“花子さんのトイレ”を使用したことにより、冴子が花子さんだという噂が全校に広まってしまう。

 オカルト趣味には見向きもせず、監獄みたいな学校の造形(これは見事だ)に代表されるように、異質なものを弾圧する殺伐とした小学生たちの心象を写し取ることに専念している。「学校の怪談」の舞台が夏だったのに対し、こちらの季節は真冬。笠松則通のカメラが捉えるモノクロに近い寒色系の荒涼とした映像。鏡を使ったトリッキィな画面処理も相まって、サスペンスの盛り上げ方も申し分ない。

 なつみや冴子に対するイジメの場面は、あえてリアルに細かく描かず、現象面だけ切り取るだけなのだが、その陰湿さにはゾッとしてしまう。その殺伐さの延長が連続殺人を生む土壌になっていると言わんばかりだ。そして主に子供の視点からドラマが展開するのも正解で、豊川悦司(今回はフツーの役だけどいい味出してる)や大塚寧々など大人のキャラクターが必要以上にしゃしゃり出ないのもいい。

 しかし、残念ながらラスト近くの真犯人と主人公たちの追っかけ&格闘場面になってくると、とたんに映画がチープになってしまう。この監督はこういうシーンが不得意なのだろう。段取りの悪さには失笑してしまった。少し“正体”をあらわす本物の“花子さん”にしても取って付けたみたいで、いっそ出てこないようにシナリオを操作してもよかったと思った。いずれにしろ、松岡監督にとっても“珍作”の部類であろう(^^;)。

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