元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「蜘蛛の巣を払う女」

2019-01-28 06:21:18 | 映画の感想(か行)

 (原題:THE GIRL IN THE SPIDER'S WEB)前作「ドラゴン・タトゥーの女」(2011年)よりも面白い。ベストセラーである原作の「ミレニアム」シリーズに接していない観客(←私も含む ^^;)に対しても分かりやすくアピールするためか、明快なスパイ・アクションに徹しているようだが、これが功を奏している。元ネタとの関係性に拘泥して作劇の範囲を狭めるよりも、映画自体でウェルメイドに徹する方が合理的なのは当然だ。

 ストックホルムに住む一匹狼で荒仕事も請け負う天才的ハッカーのリスベットは、人工頭脳の世界的権威であるバルデル教授から、開発してNSAに“納品”した世界中の戦術核を制御するプログラムを取り戻してほしいと頼まれる。難なくプログラムを奪還したリスベットだが、起動させるためにはバルデル教授の息子が知るパスワードが必要なことが判明。しかも、プログラムを横取りしようと謎の組織が暗躍し始める。

 この組織を仕切っているのが、16年前に生き別れになったリスベットの妹カミラであった。父親がボスを務めていた犯罪シンジケートを受け継いだカミラは、リスベットに対決を挑む。

 前作でクローズアップされていたジャーナリストのミカエルの扱いが軽いのは欠点だと思うが、その分リスベットとカミラとの姉妹の確執が効果的に取り上げられており、あまり気にならない。またプログラムを取り返そうとアメリカからやってくるNSAのエージェントのカザレスや、事件を闇に葬ろうとするスウェーデン公安警察、リスベットのハッカー仲間など、バラエティに富んだ面子がストーリーに絡み合う。監督フェデ・アルバレスはこれらのキャラクターを上手くコントロールし、テンポを落とさずに最後まで乗り切っている。

 アクションシーンの見せ方や段取りも申し分ない。何より、冷たく厳しい北欧の冬の描写が印象的だ。主演のクレア・フォイは前作のルーニー・マーラに比べると器量は落ちるが(おいおい ^^;)、身体は良く動くし観ているうちに気にならなくなる。

 カミラ役のシルビア・フークスはまさに“怪演”で、エキセントリックな持ち味を発揮。時に、真っ白な雪原をバックに赤い衣装を身にまとって現れる場面はインパクトが大きい。ペドロ・ルケのカメラによる撮影やロケ・バニョスの音楽も言うこと無しで、この調子ならば(原作を離れても)いくらでも続編を作れそうだ。
コメント
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