元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「おニャン子・ザ・ムービー 危機イッパツ!」

2019-01-25 06:19:26 | 映画の感想(あ行)
 86年東宝作品。何と、私は本作を公開当時に劇場で観ているのだ(笑)。もっとも、目当ては断じてこの映画ではなく、同時上映の森田芳光監督「そろばんずく」の方であった(再笑)。ただ、厳密に言えば本作はタイトル通りの“アイドル映画”ではなく、本筋は当時の人気グループであった“おニャン子クラブ”のコンサート会場での爆弾テロ事件をめぐるサスペンス劇だ。

 しかし、そのストーリー自体は語る価値も無く(というか、現時点ではほとんどが忘却の彼方だが ^^;)、宮川一朗太に江口洋介、伊武雅刀、関根勤、安岡力也、桃井かおりといったキャストも印象に残る演技はしていない。なお、監督は原田眞人で、いくつかの秀作・佳作をモノにした彼もアイドル絡みの仕事とは相性が悪いようだ。

 で、どうして今この映画のことを書くのかというと、最近起こったNGT48の騒動のニュースに接して、図らずも本作を思い出したからである。かつてのおニャン子と現在の(NGTを含む)AKB関連グループは、言うまでもなく同じ仕掛け人の手によって作られた。しかしながら、延べ50人ぐらいは在籍していたと思われるおニャン子のメンバーの中で、現時点で芸能界に残っているのは数人。しかも、大成して今でも一線で活躍している者は(私の知る限り)存在しない。

 まあ、おニャン子自体が“放課後のクラブ活動”のようなノリで出来たグループであり、活動期間も3年足らずと短かったので、そんな顛末も仕方がないかと思わせる。だが、AKB一派は10年以上活動しており、参加メンバーも膨大な数だ。ヒット曲は多くなり、我が国のポップス界で地位を獲得している(ように見える)。

 一方、当のメンバー達の状況はどうかといえば、多くが単にお仕着せの楽曲をこなすだけで各個人の芸能的スキルは大して積み上げられない。各個人を差別化するものは主にファンサービスであり、それが結果として“総選挙”のランキングに反映されるということなのだろう。本来の“芸能”の範疇から逸脱した狭い世界での(無意味な)マウンティング合戦が、今回のNGTの事件の背景にあると思う。

 この状態が果たして各メンバーにとってプラスになるのかどうか、甚だ疑問だ。AKB一派の構成員及びその“卒業生”が映画に出ることは少なくないが、いずれも芳しい結果は得られていない。考えてみれば当たり前で、十代から二十代前半までの大事な時期を極端な多人数のアイドルグループの一員として愛嬌を振りまくことに腐心している間に、本当に芸能の道を歩もうと考えている同世代の者達は、それぞれ研鑽を積んでいるのだ。その差は大きい。

 この映画の出来自体に関してはあまり言及する余地は無いが、今から思い返せば、ライトな雰囲気でわずかな期間ヒットチャートを賑わせただけのおニャン子クラブの時代は、いわば牧歌的であったと感じる。対して現在のAKBの体制は、グループの多くのメンバーにとって本質的なメリットになっているとは思えない。NGTの騒動はその歪みが表面化したものなのだろう。個人的にはこのシステムは“限界”に達していると思っている。抜本的に見直さなければ、似たような事件は今後も頻発すると予想する。
コメント
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