元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「サスペリア PART2」

2019-01-27 06:51:02 | 映画の感想(さ行)

 (原題:PROFONDO ROSSO)75年イタリア作品。今年(2019年)リメイク版が日本公開された「サスペリア」(77年)とは、ストーリーの関連性はまったく無い。それどころか「サスペリア」よりも前に作られている。「サスペリア」のヒットにより、同じ監督作という理由だけで配給会社が“2作目”という扱いにして二匹目のドジョウを狙ったものだ。今から考えると無茶苦茶だが、当時はそういう“マーケティング”が罷り通っていたと見える。

 ローマで開催されていた欧州超心霊学会の会場で、壇上に立った霊能者であるヘルガが突然“この会場に、過去に人を殺し、また誰かを殺そうとしている者がいる”と告げる。その後、帰宅したヘルガは何者かに襲われて殺される。遺体の発見者は近所に住むイギリス人音楽家のマークだが、彼はヘルガの住居の壁に並べられていた絵画が、一枚消えていたことに気付く。

 友人のカルロが容疑者を目撃していた可能性が高いと踏んだマークは彼の家を訪ねるが、元女優でスターだったという母親と共にマークを迎えたカルロは、なぜかマークに深入りは危険だと忠告するのだった。だが、犯人の凶行はさらに続き、犠牲者は増え続ける。ついにはマークも狙われるようになってしまう。

 冒頭の、クリスマスの夜に子供の歌が流れる中で行われた殺人の場面がインパクトが大きい。惨劇を影だけで表現し、次に地面に落ちた血の付いた包丁に近づく子供の足を捉えたこのショットは、言い知れぬ不安を画面に充満させる。

 正直、この映画の雰囲気は(製作年度を勘案しても)古臭くてチープだ。仕掛けられているトリックや、犯人探しのプロセスも無理筋である。しかし、それが逆に即物的な怪奇描写を盛り上げているのは何とも玄妙だ。ラストの扱いも残虐描写の最たるものながら、カタルシスを覚えてしまう。

 監督ダリオ・アルジェントによる画面構成はけっこう凝っており、これが安っぽいサスペンス劇の中に挿入されると、何やらカルト映画のような独自性を醸し出してくるのだから面白い。主演のデイヴィッド・ヘミングスをはじめダリア・ニコロディ、ガブリエレ・ラヴィア、マーシャ・メリルという面々は皆一癖ありそうで、見ていて気を抜けない(笑)。音楽は「サスペリア」と同じくゴブリンが担当しているが、これが素晴らしい効果を上げている。
コメント
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