元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「春の夢」

2017-10-02 06:33:55 | 映画の感想(は行)

 (原題:春夢)アジアフォーカス福岡国際映画祭2017出品作品。2016年製作の韓国映画。これはダメだ。完全に作者の独り善がり。国際映画祭には大抵この手のシャシンがいくつか紛れ込んでくるものだが、運悪く遭遇してしまったという感じである(苦笑)。

 舞台はどこかの地方都市。ケチなチンピラのイクチュン、北朝鮮出身でリストラ寸前のチョンボム、金は持っているが少し頭が足りないジョンビンの3人は、いつも一緒に行動している。そんな彼らの行きつけの店は、マドンナ的存在のイェリが営む居酒屋だ。彼女は寝たきりの父親の看病をしており、くだんの3人も時折手助けはするのだが、それで何か起きるのかというと、何も無い。

 イクチュンはボスとの折り合いが悪いようだが、深くは描かれない。チョンボムやジョンビンの境遇も、思わせぶりだが何も説明されていない。イェリも、どういう経緯でこの3人と付き合っているのか全然分からず、どんなポリシーを持って日々生きているのかまるで表現されていない。そんな連中が目的も無くグタグタと過ごし、無為な日々を送るのを漫然と追っただけの映画だ。

 モノクロで撮られているが、あまり意味のある手法だとは思えない。ラストでは“夢から覚めたように”カラー映像に変わり、それまでの設定がひっくり返されたようなモチーフが提示されるが、これも意味が無い。監督チャン・リュルなる人物だが、タイトル通り自分の夢物語を自己陶酔的に綴っただけで、特に才能があるようには見えない。出演者も、名前を覚えたくないような奴ばかりだ。

 ところで、私自身が韓国映画を観て感心したのは、いったいいつの話だっただろうか。もちろん、日本で封切られる韓国作品をくまなくチェックしているわけではないので迂闊なことは言えないが、鑑賞意欲がわくような映画を、近年あまり見かけない。彼の国の置かれた状況も関係しているのではないかとは思うが、一頃の勢いが感じられないのは確かだと感じる。
コメント
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