元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「アウトレイジ 最終章」

2017-10-23 19:23:18 | 映画の感想(あ行)

 期待していなかったが、実際に観た印象も予想通りの“中の下”のレベルだ。もっとも、前2作も観ているので、惰性でスクリーンに対峙したというのが実情である(苦笑)。ただ、この監督独特の作劇のリズムは健在なので、観ている間はさほど退屈はしなかったのはまあ良かった。

 前作での山王会と花菱会との抗争で好き放題暴れ回った元大友組組長・大友は、韓国の裏社会を牛耳る実力者である張会長のもとに身を寄せていた。ある日、滞在先の済州島で韓国に出張中の花菱会の幹部・花田がトラブルを起こし、そのため張会長の部下が殺されるという事件が発生する。怒った大友は数人の子分を引き連れてこっそりと日本に戻るが、そのことが花菱会内部の会長派と若頭派との権力争いを誘発し、さらには張グループとのバトルに発展していく。

 前回狼藉の限りを尽くした大友が何食わぬ顔で韓国に高飛びし、さらには日本に舞い戻って大殺戮をやらかしても、警察は申し訳程度の捜査をするだけ。いくら裏社会から警察に“根回し”がされていたといっても、現実離れしている。話自体も行き当たりばったりで、登場人物同士が何やらモゴモゴと会話していくと唐突に血の雨が降るというパターンの繰り返しだ。しかも活劇場面は少しも盛り上がらず、カタルシスも無い。

 まあ、これは実録路線ではなく一種の絵空事だと割り切れば、あまり腹は立たないのかもしれない。いわば本作は北野武監督の前作「龍三と七人の子分たち」(2015年)の焼き直しだ。目立ってるのはジジイばかりで、しかも比較的年齢の若い順から死んでいく。年寄りの心意気ここにありという感じか(笑)。

 北野作品に特有の、乾いたギャグや静的な画面配置、そして演出の“呼吸”は本作でも大きくフィーチャーされている。また過去の作品のモチーフもあからさまに採用されており、この監督の虚無的な作風を承知している観客向けのシャシンと言えるだろう。

 主演のビートたけしをはじめ西田敏行、白竜、名高達男、塩見三省といったおなじみの面々に加え、大森南朋、ピエール瀧らが新たに参加。全員が楽しそうに演じているが、言い換えれば予定調和で意外性は無い。強いて挙げれば、前会長の娘婿で元証券マンの野村に扮する大杉漣のヘタレ演技が面白かった程度。

 柳島克己の撮影と鈴木慶一の音楽はいつも通りだ。それにしても、このシリーズは今回で終わるとして、これから北野監督はどういう作品を手掛けるのだろうか。いつまでもオフビートなヤクザ物ばかりではマンネリだ。(前にも書いたが)他から持ち込まれた企画を、他人の脚本を元に撮り上げるという方法をそろそろ考えた方が良いのではないだろうか。
コメント
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