元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「秋のソナタ」

2017-10-15 06:32:35 | 映画の感想(あ行)
 (英題:Autumn Sonata )78年作品。スウェーデン映画であるが、監督のイングマール・ベルイマンが税金問題に関わっていたため国内で製作できず、ノルウェーで撮影されている。ゴールデングローブ賞の外国語映画賞受賞をはじめ、米アカデミー賞外国語映画賞ノミネート等、数々のアワードを賑わせた作品だ。しかしながら、個人的にはあまり評価しない。どうも設定に無理があるような気がする。

 ノルウェーの田園地方にある牧師館。夫と暮らすエヴァは、母親のシャルロッテに7年も会っていない。そこで母を自宅に招くために、手紙を書く。車を運転してやってきたシャルロッテは、世界的に知られたピアニストで、老いた今も華やかなオーラをまとっている。母子は笑顔で抱き合うが、2人には秘めたる確執があった。それはエヴァの温厚な牧師の夫も同様で、互いに本音を見せずにどこか余所余所しい態度を取る。



 実は、この牧師館にはシャルロッテのもう一人の娘レナが同居していたのだ。彼女は進行性の麻痺の病気で寝たきりの生活を送っており、以前は療養所に入っていたが、すでに退院していた。母親はそのことを知らないばかりか、見舞いにも行かなかったのだ。その夜、シャルロッテと2人きりで語り合うエヴァだったが、エヴァは酔いに任せて若い頃の母に対する屈託を蕩々と述べ始める。シャルロッテも自分も苦しんだと激しく反論。興奮した母子のバトルはいつまでも続くのだった。

 確かにシビアな話なのだが、観る側としては“仕方が無いだろう”という諦念を抱かざるを得ない。これは同監督の「ある結婚の風景」(73年)と比べてみると、ドラマ的な盛り上がりの違いを認識することが出来る。「ある結婚の風景」の主人公達は夫婦であるが、有り体に言えば夫婦はもともと“他人同士”なのである。だから、行き違いを避けるには徹底的な話し合いと意見の摺り合わせが必要になる。それでもイヤならば別れれば良い。

 しかし、本作の当事者達は親子関係にある。いくら仲違いしようと、安易に関係性を帳消しには出来ない。エヴァとシャルロッテは、傷付け合っても“しょせん親子”であり、このギクシャクした状態で今後も過ごすしか無いのだ。さらにレナの存在は露悪的な部分ばかりが目に付き、観ていてウンザリする。

 シャルロッテ役のイングリッド・バーグマンはこれが最後の出演作になる。いくらシリアスな演技に徹しても、かつての輝かしいキャリアを思い起こすと、この映画の彼女は見るからに寂しい。エヴァに扮するリヴ・ウルマンは好演だが、筋立てにあまり興味が持てないので強い印象は残せない。ただ、スヴェン・ニクヴィストの撮影は見事。この名カメラマンの代表作だろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする