元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」

2016-12-30 07:16:06 | 映画の感想(ら行)

 (原題:ROGUE ONE )別に観なくてもいい映画である。製作意図が不謹慎とも言えるもので、中身も弱体気味。特にキャラクター設定の練り上げ不足は如何ともし難く、ドラマがちっとも盛り上がらない。ストーリー自体も面白くなく、ホメるべき箇所が見つからないという、何とも困ったシャシンだ。

 帝国軍の究極兵器“デス・スター”の設計に携わったアーソ博士は嫌気がさして開発チームを抜け、辺境の惑星で妻子と暮らしていた。ところが帝国軍によって無理矢理連れ戻され、その際に幼い娘ジンは逃げ出し、反乱軍の首領であるソウ・ゲレラに匿われる。

 時が流れ、反乱軍はアーソ博士がデス・スターの中に脆弱な部分を故意に仕込んだことを知る。デス・スターの設計図を入手するために、有志で極秘チーム“ロ―グ・ワン”を結成。反乱軍の幹部には行動を知らせないまま帝国軍の基地に独断で乗り込む。そのメンバーの中には成長したジンも含まれていた。本シリーズの「エピソード4」の開巻直前までの顛末を追ったスピンオフ作である。

 とにかく、感情移入できるキャラクターが一人もいないのには参った。どいつもこいつも愛嬌が無く、深刻ぶった表情を浮かべるだけ。ならば内面描写が十分成されていたのかというと、それも違う。単なる“記号”のように、与えられた役柄とセリフをトレースするのみだ。加えて、前半部分の画面の暗さには閉口する。

 暗鬱な映像と根暗な登場人物達の覇気の無い芝居が延々と続いた後、中盤からは明るい画面のもとでバトルシーンが展開するのだが、新しいアイデアが提示されるわけでもなく、賑々しいわりにはひどく退屈だ。

 そもそも、本作に出てくる連中はほとんど本シリーズには登場しない。だから結末はどうなるかは予想が付く。それならそうでハードな戦争映画としてのルーティンを守るべきだと思うのだが、本来“脳天気な宇宙ファンタジー”としての体裁を持つこのシリーズにはそういうテイストは合わない。「スター・ウォーズ」の御膳立ての中で「プライベート・ライアン」をやろうとしても、居心地が悪いだけだ。反乱軍首脳部と“ロ―グ・ワン”との関係性の扱いはいい加減で、主人公達が何か戦果を挙げそうになると、何も考えずに“全軍突撃”の命令が下されるというのは噴飯物。

 ギャレス・エドワーズの演出は凡庸で、盛り上げるポイントを掴めないまま終わってしまう。フェリシティ・ジョーンズ扮するヒロインは、どう見ても“二線級キャラ”であり、訴求力は無し。ドニー・イェンやチアン・ウェンら中国系俳優も登場するが、座頭市あたりの低級なパロディでしかない(やたらフォースというフレーズを念仏のように唱えるのも鬱陶しい限り)。

 ジョン・ウィリアムズのお馴染みのテーマ曲も無く、ラストに本編のキャラクターを何人か取って付けたように登場させるのにも脱力する。スピンオフ作品とは名ばかりで、本編の各作品の“隙間”で商売しようという小賢しい下心が見え隠れして、実に不愉快。本シリーズを追う気力も失せてくるようだ。
コメント
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