元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ジムノペディに乱れる」

2016-12-16 21:25:00 | 映画の感想(さ行)

 やっぱり行定勲は三流の監督だ。日活の成人映画の輝けるブランド“ロマンポルノ”の45周年を記念し、現役の監督たちが新作ロマンポルノを手掛ける“日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト”の第一弾だが、この注目企画の一翼を担いながら低調な仕事ぶりしか見せられないこの演出家には、早々にレッドカードを突きつけるべきだと思う。

 かつては国際映画祭で賞を獲得したこともある映画監督の古谷も、今はスランプに陥り、せいぜい低予算映画の仕事にありつくのがやっとだ。今回もつまらない脚本に閉口しながらも渋々と新作の撮影に入るが、主演女優がラブシーンで文句を言い始め、結果、映画は製作中止となってしまう。急にヒマになった古谷は、映画専門学校の教え子である結花と関係を持つ。さらには知り合った女ほぼ全員と性交渉を持つが、実は彼には入院中の妻がいて、現在は植物人間状態で余命幾ばくも無い。しかし彼女を前にしても、古谷は無軌道な生活を辞めようともしない。

 自堕落なダメ中年の性遍歴を追うという設定はまあ悪くは無いが、問題はこの主人公に異性を惹き付ける魅力が微塵も感じられないことだ。どんなにショボクレていても、内にキラリと輝くカリスマ性やダンディズムがあれば女達がなびくのも、まあ納得できる。しかしどう見ても古谷は冴えないオッサンそのもので、こんな中年男を前に躊躇無く女どもがパンツを脱いでいくシーンの連続には、鼻白むばかり。

 さらに言えば、ロマンポルノの基本的手法である“10分に1回のセックスシーン”のノルマは何とかクリアしていながら、そのヴォルテージの低さには呆れるばかりだ。ただ裸の男女を並べているだけで、そこにはエロさも“ときめき”もまったく無い。行定監督には“アダルトビデオでも見て少しは勉強すれば?”と言いたくなった(笑)。

 面白くもないエピソードが延々と積み重り、最後は取って付けたようなモチーフが挿入される。また題名の通りサティのジムノペディ第一番が頻繁に挿入されるが、これが何のメタファーにもなっていないばかりか、画面と全然合っていない。この監督は音楽的センスも持ち合わせていないようだ。主演の板尾創路にとっても、本作は“黒歴史”になるのではないか。芦那すみれや岡村いずみといった女優陣も、往年のロマンポルノの銀幕を飾ったお歴々と比べるのもおこがましい。

 それでも興味を惹かれた箇所を無理矢理挙げてみると、まず風祭ゆきがチラッと出ていること。若い頃の彼女の“熱演”に感心した身としては嬉しかった。そして、古谷が“最近の若い女優はなかなか脱がないな”みたいなことを呟くことだ。これは行定勲の“本音”かもしれないが、確かに若くて良い人材がけっこういる割には“身体を張れる”女優が少ないのが現状。このあたりを打破していくことが今後の“課題”かもしれない(苦笑)。
コメント
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