元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ダークマン」

2016-12-12 06:36:10 | 映画の感想(た行)
 (原題:DARKMAN )90年作品。サム・ライミ監督によるヒーロー物といえば「スパイダーマン」三部作を挙げる向きが多いだろうが、彼のヒーロー映画の代表作は、間違いなく本作だと思う。アメコミの原作に準拠しないオリジナル・キャラクターで、彼のオタク趣味が十分に発揮されていると言って良い出来だ。

 人工皮膚の開発に従事する科学者ペイトンは、恋人で弁護士のジュリーが取り組んでいる都市開発にからむ収賄事件の証拠を持っていたことから、殺し屋のデュランの一味に襲われ、全身に大火傷を負ってしまう。奇跡的に一命を取りとめた彼は、神経が切断されて感覚が麻痺し、その結果抑制力を失なって超人的なパワーを発揮する身体になっていた。焼けただれた顔をジュリーにも見せられなくなった彼は、密かに廃工場で研究を続け、ついに誰にでも化けられる人工皮膚を開発。闇のヒーロー“ダークマン”となってデュラン一味に復讐を開始する。



 人に姿を見せられず、仮面の下で生きる。怒りが爆発すると常人の6倍の力を発揮するが、人工皮膚は99分しか保たない。パワーはあるが、あまりにもハンディの多いこのヒーロー像は、アメコミの主人公(たとえば「バットマン」等)よりも切迫した宿命を背負い込み、しかも十分にマンガチックだ。

 研究所が爆破されるとペイトンが文字通り火だるまとなって外に放り出されるシーンはケッ作だが、さらに怒りを爆発させると「巨人の星」もかくやと思われるほどの大仰な映像イメージが挿入される(笑)。一応製作元はユニヴァーサルというメジャー会社なのだが、徹底したB級タッチには嬉しくなってしまう。

 ライミの演出はテンポが良く、アクションシーンも万全で、ホロ苦いラストの処理も見事なものだ。主演のリーアム・ニーソンは絶好調。根がマジメなのだが理不尽な境遇に耐えられずに暴走してしまう主人公を、正攻法(?)のシリアス演技で実体化させてしまうのはアッパレである。

 女優の(外見面での)趣味がよろしくない同監督だが、ジュリー役のフランシス・マクドーマンドもルックスはイマイチ。しかしながら、持ち前の演技力で役を自分のものにしている。コリン・フリールズやラリー・ドレイクら悪役もイイ味を出している。さらにはジョン・ランディス、ブルース・キャンベルらがゲスト出演しているのも嬉しい。ダニー・エルフマンの音楽も効果的。ライミ監督にはこういうタッチの娯楽編をまた撮って欲しいものだ。
コメント (2)
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