元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「8人の女たち」

2016-02-08 06:34:16 | 映画の感想(英数)
 (原題:8 Femmes)2002年フランス作品。小粋で楽しいミュージカル映画だ。フランソワ・オゾン監督も、このようなタイプの作品をコンスタントに発表してくれれば、一般的な知名度もアップするのではないかと思ったものだ。

 50年代、雪に閉ざされた山間の大邸宅に、クリスマス・パーティのために家族が集まってくる。ところが、メイドのルイーズが一家の主人の死体を発見。誰かに刺殺されたらしい。容疑者は邸宅に集まった8人の女たちだ。主人の母のマミーは株取引に夢中で、かなり欲が深い。妻のギャビーは夫の同僚と浮気中。元ダンサーである妹のピレットも金に困っている。



 ギャビーの妹のオーギュスティーヌは難しい性格で未だ結婚できないが、実は殺された義兄に好意を持っていた。長女スゾンと次女カトリーヌも腹に一物持っているようで、黒人の家政婦シャネルも一筋縄ではいかない雰囲気だ。そして身持ちの悪そうなルイーズも当然疑われる。だが、真相は意外なものだった。

 ゲイであることをカミングアウトしているせいか、オゾン監督の女性を見る目は悪意に満ちている。一家の主が殺されたにも関わらず皆どこか楽しそうだし、しかもほぼ全員スキャンダルまみれのプロフィールを隠そうともしない。唯一マトモだと思える末娘にだけスカートではなくパンツをはかせているのも実に作為的。これ見よがしの密室劇も“ああ、またやってるな”と苦笑するしかない。

 しかし、映画の印象はオゾン作品には珍しく良いのだ。これはもちろん、近来まれにみる超豪華な出演者のせいである。ギャビー役のカトリーヌ・ドヌーヴをはじめ、ダニエル・ダリューやイザベル・ユペール、ヴィルジニー・ルドワイヤン、リュディヴィーヌ・サニエなど、超ベテランから若手まで有名どころをズラリと並べ、しかも彼女たちが歌って踊ってくれるのだからたまらない。ここまで贅沢なキャスティングだと、監督の小賢しい屈折ぶりも取るに足らないものに思われてくる(爆)。やはり映画はスターに尽きるのだ。

 美術や衣装も万全。封切られたときは年末だったが、真に正月映画らしい作品とは、こういうシャシンなのかもしれない。8人の中ではサスガの色気を見せるビレット役のファニー・アルダンもいいが、ルイーズに扮する悪女的なエマニュエル・ベアールには参った。もっとも、女性観客には嫌われるキャラクターだろうけどね(笑)。
コメント
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