元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「第10回九州ハイエンドオーディオフェア」リポート(その3)

2013-05-04 07:11:33 | プア・オーディオへの招待
 このフェアで印象に残った機器をいくつか挙げておくと、まずスウェーデンのaudio pro社のスピーカーAVANTO FS-20とAVANTO S-20に指を折りたい。AVANTO FS-20はトールボーイ型のモデルで、低音用ユニットが筐体の側面に取り付けられているという、大きな特徴を持つ。音も低域の量感に優れた明るく屈託のないもので、聴感上の帯域も及第点だ。

 そして何より、このAVANTO FS-20は安いのである。定価で10万円。実売価格は8万円代になるだろう。前面にはレザーが貼られ、見た目も悪くない。解像度や情報量においては上級機には及ばない面はあるが、フロアスタンディング型らしいスケール感が味わえることを考えると、かなりのお買い得品だと言って良い。

 一方のAVANTO S-20はコンパクト型で、実売価格は2万円代だ。ただし、安いとはいっても欧州ブランドらしい明るく温度感のある音色はしっかりとキープされている。しかも、無造作に置いても音に大きな破綻を来すこともない。これはミニコンポのユーザーが手軽に音質向上を求める際に最適なモデルだと思う。もちろん、多くの国産ミニコンポが踏襲しているドンシャリな音が好きなリスナーには合わないが、もっと肌触りのいい音でヴォーカルなどを楽しみたいユーザーも少なくないはずで、そういう層には無条件で奨めたい。



 スイスのGOLDMUND社は世界有数のハイエンドメーカーとして知られるが、今回は小型のスピーカーを出品してきた。Micro Metisという商品で、高さが21センチほどのデスクトップサイズである。キャビネットはアルミ製で、丁寧に作り込まれており、小さくても安物感はない。音のクォリティはかなりのもので、広大な音場と清涼感あふれる音色により部屋の空気まで変わるようだ。

 しかし、このスピーカーは60万円もする。いくら高級メーカーのモデルでも、サブ・システムとして寝室や書斎に置く方がふさわしい形態の製品だ。せめて半額にしてもらいたい(爆)。

 独LINDEMANN社の小型スピーカーBL-10の音は魅力的だ。前後左右に広がる音場に柔らかく艶やかな音像が展開する。特に弦楽器の繊細さと明朗さには感服した。ところが、この製品は100万円だ。しかも、前述のMicro Metisのような質感の高いエクステリアは持ち合わせていない。見かけは3万円の安物である。

 よく見るとユニットは自社製ではないようで、専用スタンドも実にチープな外観である。どこをどうすればこのような法外なプライスを付けられるのだろうか。もちろん音は凡百のコンパクト型スピーカーとは格が違うことは分かるが、ならば良く出来た40万円ぐらいのスピーカーと比べて決定的な差があるかというと、そうは思わない。ボッタクリと言われても仕方がない商売だ。



 英国SPENDOR社のスピーカーを久々にじっくりと聴いてみたが、改めてこのブランドの長所を確認した。とにかく音の取り出し方がソフトだ。繊細かつナチュラルで、しかもボケたところのないクリアなサウンドである。今回接したのは上位機種のSP100R2だが、このテイストは全モデルに共通していると思われ、次のスピーカーの買い換え(いつの話だ? ^^;)には候補にしたいブランドである。

 別のブースで展示されていたTANNOYHarbethも含め、節度のある質感と暖色系のサウンドが持ち味の伝統的な英国製スピーカーの数々は、今の私には実に魅力的に映る。実を言うと、若い頃はこういう音は大嫌いだった。積極的に前に出るキレの良い展開以外はオーディオとは認めず、ソフトな音なんか邪道だと決めつけていたものだ。

 ところがトシを取ってくると、音の好みも変わる。今ではハイファイ度を強調したような、聴いていて疲れる音はお呼びでない。Harbeth担当のスタッフが“こういうブランドは、人生の最後に買うのにふさわしい”と言っていたが、案外そうなのかもしれない(笑)。

(この項つづく)
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