元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ロビン・フッド」

2010-12-22 06:37:45 | 映画の感想(ら行)

 (原題:Robin Hood)舞台設定からいえば以前リドリー・スコットが監督した「キングダム・オブ・ヘブン」(2005年)の続編みたいな作品だが、質の面では“前作”よりもかなり落ちる。それは本作に現代性が欠如しているからだ。

 十字軍遠征を題材にした「キングダム~」は、今の時代にまで尾を引く中東問題や戦争の理不尽さをスクリーン上に照射することに成功。しかもそれらがスペクタクルな史劇やヒーローものとしてのエンタテインメント性と両立していた。対してこの映画には訴求力がない。

 そもそもロビン・フッド自体が架空の人物である。いくら周辺に史実を散りばめても、実在感が足りなくなるのは仕方がない。さらにこの作品はイングランドの十字軍遠征の兵士だった主人公が、義賊としてシャーウッドの森に住み着くようになったくだりを描いている。つまりは“ロビン・フッド・エピソード1”みたいな話であり、過去に映画や読み物で親しまれたような勧善懲悪物ではない。結果的に12世紀末当時のイギリスにおけるジョン王の圧政というシビアな(ある意味現代にも通じる)時代背景と、後に単純な英雄談として知られるようになるロビン・フッドの物語とが上手く融合していないのだ。

 従って、マグナ=カルタに始まる王政に対する動きも取って付けたような感じになっている。ロビン・ロングストライドがどうしてロビン・フッドになったのか、それも描写不足だ。映画の中では彼の父親が立派な思想家で、それを受け継いでいるといった設定だが、その頃の彼の記憶は失われていて、ロクスリー卿の回想談によってそれを急に思い出すという御都合主義には閉口してしまった。

 マリアンやマーシャル卿、クック修道士といった脇のキャラクターの扱いも甘い。敵役のゴドフリーにしても貫禄不足だ。アクションシーンは確かに力が入っているが、R・スコット作品としてはそれほどでもない。少なくとも「キングタム~」よりも落ちる。クライマックスのドーヴァーでの合戦に至っては、スピルバーグの「プライベート・ライアン」のモノマネかとも思わせ、アイデア不足が否めない。

 主演のラッセル・クロウは相変わらずの俺様主義で、大根ぶりを気にも留めずにスクリーン上を我が物顔に動き回る。こういう素材を相手にするには精緻な脚本で抑え込むに限るが、言うまでもなく本作では上手くいっていない。ヒロイン役のケイト・ブランシェットもイマイチ精彩を欠いていて、キャラクターの練り上げが不調に終わっている。ウィリアム・ハートやマックス・フォン・シドーといった手練れも配してはいるのだが、大した見せ場もない。全体的に、カンヌ映画祭での不評が分かるような気勢の上がらない映画と言っていいだろう。

 なお、数年前の企画段階ではラッセル・クロウの一人二役という話もあったらしいが、それが実現していたら別の意味で興味深い作品(=怪作)になったかもしれない(^^;)。
コメント
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