元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「笑う蛙」

2010-12-13 06:23:33 | 映画の感想(わ行)
 2002年作品。平山秀幸監督の作品の中では一番つまらない。横領事件を起こして指名手配中の元銀行支店長(長塚京三)が、長期間の逃亡の末、熱海にある義母(雪村いづみ)の別荘に忍び込む。しかし、空き家だと思っていた別荘には妻(大塚寧々)が住んでいた。妻に押し入れに匿われる彼だが、妻と愛人(國村隼)とのやりとりや、義父の遺産相続騒動、義母の再婚問題などのゴタゴタを壁に空いた穴を挟んで見せられるハメになる。藤田宜永の「虜」の映画化。

 私の一番嫌いなタイプの映画だと断言したい。監督や製作者は“ブラックなホーム・コメディを狙った”と言っているが、それに必要な演出の粘りも求心力もゼロ。あるのはちっとも面白くもないギャグの応酬、そしてテレビドラマ以下のワザとらしい演技と演出だけだ。最初から最後までまったく笑えず、どうでもいいような結末には脱力。何よりこのネタは、アラン・ドロン主演の「危険がいっぱい」の完全なパクリじゃないか。

 この映画は某映画祭で観たのだが、上映後の質疑応答のコーナーではなぜか全員大絶賛。やれ“素晴らしい人間喜劇である。小津安二郎作品へのオマージュか”だの“木下恵介作品を思い起こさせる人物観察の巧みさ”だの“「男はつらいよ」シリーズに対する新世代の回答”だの、はては“チエーホフ作品を想起させる”だのという、まるでホメ殺しと錯覚しそうな賛辞を皆恥ずかしげも無く送っているのには呆れた。

 小津や木下や山田洋次やチエーホフにオマージュを捧げるヒマがあれば、最初からそれらを凌ぐほどの気合いを持って映画製作に臨まんかい! 中途半端なオマージュなど、いらん。

 なお、その時ゲストで来ていた大塚寧々は本当にキレイだった(そういえば彼女は当時、私生活ではいろいろあったことを思い出す ^^;)。何でも「笑う蛙」というタイトルの命名も彼女だったとか。
コメント
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