元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「青い春」

2010-12-21 06:29:57 | 映画の感想(あ行)
 2001年作品。高校3年の春を迎えた不良高校生達の姿を描いた群像劇。松本大洋による複数の短編を要領よく一本の映画にまとめた脚本だけでも得点高いが、それ以上にヒリヒリした暴力性を前面に出す豊田利晃の演出には感心した。

 コケ脅しのバイオレンスではなく、不良高校生どもの荒んだ内面のせっぱ詰まった表出としてのシビアな暴力がリアリティを伴って観客に迫る。「ピンポン」を観ても感じたことだが、松本大洋は人間の序列に大きなこだわりを持つ作家なのだろう。

 松田龍平(相変わらず大根。しかし、超然とした雰囲気が主人公像に合っている)扮する不良のリーダーと、新井浩文をはじめとする仲間達のランキングは決定しており、それを認めない者は破滅してゆく。その残酷なまでの割り切り方が、またある種の感慨をもたらすことも確かなのだ。

 また、マメ山田演じる小人の教師を登場させ、ドラマを一歩も二歩も引いて捉えるモチーフを用意しているところも作者の冷静さの現れだろう。観ていてちっとも楽しい映画ではないが、短い上映時間も相まって切れ味は鋭い。ミッシェル・ガン・エレファントによる音楽は素晴らしく効果的だ。
コメント
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