元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「わたしのグランパ」

2010-01-28 06:20:27 | 映画の感想(わ行)
 2003年作品。13年ぶりに出所した極道者と中学生の孫娘がヤクザ相手に立ち回りを演じる・・・・という筋立てで、しかも原作が筒井康隆なのだから、ハチャメチャの痛快作になってもおかしくないはずなのだが、どうにも煮え切らない出来だ。

 やはり脚色と演出を担当した東陽一の個性なのだろうか。ヒロイン役の石原さとみをはじめ、浅野忠信、平田満、宮崎美子などの脇のキャストにもリアリズムに徹して芝居をさせているのを見てもわかるように、かなり物語を抑制的に進めようとしている。しかし、主演の菅原文太と悪役の伊武雅刀(およびその仲間)の造形がヘンに非日常的で、彼らが画面に出ている時とその他のシーンの落差が甚だしい。

 たぶん東監督は真っ当に“非日常を描くには日常をしっかり押さえないといけない”と思ったのだろうが、両者の連携や関係性を明確につかんでおかなければ、そんな正論も宙に浮いたものにならず、取って付けたような終盤のファンタジー場面も違和感しか残らない。舞台を栃木県の田舎町に置いたのも疑問。落ち着いた街の佇まいに荒唐無稽な活劇は似合わない。

 久々の映画出演になる菅原は貫禄たっぷりだが、逆に言えばあまり能動的な演技は行っていないのだ。唯一の見所が本作がデビュー作だった石原。清潔な存在感はこの頃から際立っており、現在の活躍ぶりも納得できる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする