元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ヘヴン」

2010-01-24 20:01:48 | 映画の感想(は行)
 (原題:Heaven)2001年作品。失敗作である。殺された夫と生徒の復讐に失敗し無関係な人を殺して捕まった女教師と若い刑務官の逃避行という、まるで絵空事みたいなストーリーは、脚本を書いた故クシシュトフ・キェシロフスキのような天才肌の作家が手掛けてこそ意味があるのだ。彼が生きていたら、ドラマツルギーの不備など超越した文字通り天国的に神々しい作品に仕上げていたのだろう。

 ところが、彼の遺稿を引き継いだトム・ティクバは、映像的ケレンだけは得意な“並の監督”でしかなかった。「ラン・ローラ・ラン」のような気の利いた娯楽編はモノに出来ても、こういうアート系の作品は完全な畑違い。おかげで“珍妙な追跡劇”にしか仕上がらず、観賞後の雰囲気は最悪だ。

 ケイト・ブランシェットは熱演ながら、フェミニンなキェシロフスキ作品のヒロインたち(主にフランス系)とは正反対。共演のジョヴァンニ・リビージも精彩を欠く。アルヴォ・ペルトの流麗な音楽とトスカーナの美しい風景も上滑りで、作品を企画したプロデューサーは猛省すべきであろう。
コメント
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