元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「アンを探して」

2009-12-20 07:13:31 | 映画の感想(あ行)

 稚拙な作りだとは思うが、ほんの少し惹かれる箇所もある。17才の日本人少女が、亡き祖母の初恋の相手を探して「赤毛のアン」でお馴染みのプリンス・エドワード島を単身訪れるという話だ。

 まず、主役の穂のかという若い女優がどうも受け付けない。かなり地味な顔立ちで、演技のカンもそれほど良いとは思えない。ここではただ一人異国を旅している設定上、周囲と打ち解けない頑なさを表現しているという見方も出来るが、それ以前に未熟な印象を受ける。いくらマイナー作品とはいえ、このレベルでどうして主役を張れたのか不思議に感じていたが、聞けば“とんねるず”の石橋貴明の娘らしい。要するに親の七光りである。

 彼女を取り巻く人間模様もどこか図式的で、ホスト役の中年女性と彼女に何やかやとモーションを掛ける隣家のオッサンの二人はまだいいとして、あとの面々は観ていて気恥ずかしい。周囲には日本人の観光客がけっこういて、中には住み着いているのもいるが、何やら取って付けられたように存在感がない。

 極めつけはこの島を取材しに来る姉妹だ。プリンス・エドワード島イコール「赤毛のアン」というイメージを打ち破りたいという編集者である姉は、その意気はいいのだが具体的に何をしたいのか分からない。姉にくっついてきた妹は、物見遊山と男漁りにしか興味がないらしい。しかも、演じる紺野まひると高部あいの要領を得ない演技スタイルも相まって、まったく実体感のない宙に浮いた存在になっている。

 ただし、終盤にヒロインが何とか人との付き合い方を会得するあたりは、常套ながら普遍的な感銘を味わえる。自分だけの価値観に閉じこもっていては、道は開けない。それを自覚するまでにちょっと時間が掛かりすぎた気もするが、若い者が成長してゆくのを見るのは、悪い気はしないものだ。

 監督の宮平貴子は「セント・ヒヤシンス物語」などのクロード・ガニオン門下だということだが、演出力はまだまだである。だが、プリンス・エドワード島の美しい風景がそれをある程度はカバーする。デジカムによるあまり上質とは言えない画像からでも、この風光明媚さは十分伝わってくる。そして島と本土とを結ぶ長大な橋も存在感たっぷりだ。

 主人公の世話を焼く中年女性に扮するのはロザンナだが、意外にも映画初出演らしい。劇中で彼女は日本人の夫と死に別れたという設定だが、どうしても今は亡き相方の出門英を思い出してしまう。祖母役の吉行和子は今回はケータイ画像のみの出演。それでも印象が強いのは女優としての“格”であろうか。隣人のジェフを演じるダニエル・ピロンも良かった。
コメント
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