元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ウォッチメン」

2009-04-25 06:52:02 | 映画の感想(あ行)

 (原題:WATCHMEN)どうしようもない駄作だ。そもそも私は“ヒーローをダシに現実的な問題を語ろうとするシャシン”というのが大嫌いである。たかがヒーロー物のくせに、何を粋がっているのやら。ヒーロー物はヒーロー物らしく、単純明快な図式で脳天気に楽しませてくれればよろしい。ヘヴィな問題提起はシリアスな劇映画の縄張りだ。ヒーロー物が出しゃばってくるんじゃない。

 何がイヤかといって、たとえテーマの掘り下げが浅かろうが“ヒーロー物でここまでやれたのだから、良いじゃないか”というエクスキューズが付いて回ることだ。ヒーロー物という形式の“保険”をあらかじめ掛けておいて事を始めようとする、その根性が気にくわない。

 本作はその最たるもので、アメリカの歴史にヒーロー達が深く介在していたとか、現実社会におけるヒーローの立ち位置はいかにあるべきかとか、ヒーローであることの悲哀とは何かとか、そういう一見重そうなネタを振ってはいるものの、何ひとつ具体的に描かれていない。もう見事なほどスッカラカンだ。

 しかし、普通の社会派映画のレベルから見れば鼻で笑われるような低調な描写も、作っている側は“ヒーロー物でこんなハードな題材を扱っているのだぞ!”という自負とも思い上がりともつかない気負いから、3時間近い無駄な上映時間を浪費してしまっている。まるで何かの冗談のようだ。ラスト近くには、子供でも考えつきそうな底の浅い“世界平和に対しての提言”とやらを大真面目に吹聴していて、完全に脱力した。

 それでも映像面で見るべきところがあるのならば我慢も出来ようが、快作「300(スリーハンドレッド)」のザック・スナイダー監督作とも思えぬ薄っぺらい画面の連続で盛り下がるばかり。アクションシーンも低調の極みである。ならばエロとグロとで攻めようという作戦も垣間見えるが、これも中途半端で喚起力はゼロに近い。

 出てくる俳優は名前も覚える価値のないほど魅力のない面子が揃っている。特にヒーロー戦隊の紅一点に扮する女優なんて、色気も品もないのに露出したがるのには参った(爆)。唯一記憶に残ったのはジャッキー・アール・へイリー。それも印象的な演技をしているという意味ではなく、子役出身の彼もトシを取ったなという後ろ向きの感慨だけだ。

 なお上映中は途中退場者も目立った。実は私もそうしたかったのだが、出るタイミングを逸して結局最後まで観てしまった(笑)。そうなると徒労感ばかりが増大して、実に不快な気分になってくる。とにかく、観る価値なしの本年度屈指のワースト作品である。
コメント
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