元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「第6回九州ハイエンドオーディオフェア」リポート(その2)

2009-04-22 06:34:24 | プア・オーディオへの招待

 このイベントのもうひとつの目玉企画は、北九州市在住のジャズ好きのオーディオマニアの同好会による“北九州ジャズオーディオサミット”である。雑誌「ジャズ批評」と連動して、その年の優秀録音ディスクのベスト3の紹介と試聴を行う。前々回のフェアでも実施され、CDを購入する際の大いに参考になった。今回は音楽評論家の寺島靖国も出席し、ジャズファンとしてのウンチクも披露。なかなかの盛り上がりを見せた。

 試聴用に使ったシステムはドイツのAVANTGARDE ACOUSTIC社のスピーカーを中心とする総額一千万円を超えるラインナップで行われたが、それを鳴らすのに先立ち、サブシステム用の“安価な製品”も紹介された。司会者側は“常時大きなシステムで聴くばかりではなく、寝室などにこういう小振りのシステムを置いてもいいんじゃないか”みたいな物言いをしていたが、その“安価なシステム”とやらの価格は二百万円近い(笑)。それ以前に、六畳や四畳半の部屋に置くには苦労しそうな図体だ。こういうシロモノをサブシステムとして導入できる層というのは、一般ピープルからはかけ離れた存在であろう。これには会場を埋めたオーディオファイル達からもタメ息が洩れたようだ。

 ディスクの紹介とは別に英国LINN社のDSシステムのデモが行われた。これがなかなか興味深い。DSとはデジタルストリーミングの意味で、家庭内ネットワークに接続されたLAN接続型ハードディスクドライブから音楽信号をアンプに送り込む仕組みだ。その元々の音楽信号は通常CDからのリッピングはもちろんだが、メインとなるソースはネット配信される高品質音楽ソフトである。これが通常CDよりもずっと上位の規格を持っており、比較試聴するとその差は歴然としている。音が良いと言われるSACDをも凌駕しそうなクォリティの高さだ。しかも聴きたい曲をワンタッチで呼び出せるPCオーディオならではの利便性も光り、メーカー側でも“近い将来、我々の提案しているプランが主流となり、CDの居場所はなくなる!”と、鼻息も荒い。

 しかし、私はこの方式が一般のリスナーにとってのメインストリームになるとは思わない。なぜなら“良い音で聴きたい”と思っている層の絶対数が少なくなっているからだ。いくら“こういう質の高いソフトがネット上にありますよ”と言ったところで、多くの(オーディオマニア以外の)一般リスナーはスカスカの圧縮音源で満足している状態だ。通常CDをまともな音質で聴いている者さえ昔と比べて随分と減ってきているのに、高品位ソースばかりをアピールしたところでそれはSACDと同様の“マニア御用達商品”にしかならない。だいたい、その高品質音楽ソフトの総数だって微々たるものだろう。まず現行CDど同程度の数量にまで持っていかなければ普及は望めない。

 LINNの製品自体が一般ピープルからすれば十分なハイエンドだ。多くの者にとって“お呼びじゃない商品”である。しかも、今回のレクチャーの中でも指摘されていたが、このシステムは部品によって大きく音が変わるらしい。高価なLANケーブルを装着させないと十分な音質は得られないという。ならば使用するネットワーク・アタッチメント・ストレージの種類によっても音が変化することは十分に予想できる。またパソコンのCDドライヴの精度や、リッピング用のソフトウェアでも音は違ってくるだろうし、LANケーブルの長さも当然関係してくるかもしれないし、各家庭のネット環境によっても音質は異なってくるだろう。要するに普通のオーディオファンにとっても分からない点が多く、音質向上についての一応の道筋が出来上がるにはまだまだ時間が掛かると思われる。

 私としてはこういうマニア向けになるであろう高品位システムより、良い音から遠ざかっている世の中の大多数をピュア・オーディオに引き戻すメソッドの提案を聞きたかった。もっとも、今回のような“ハイエンドフェア”では無理であることは重々承知しているのだが・・・・(^^;)。

(この項つづく)
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