元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ベッドタイム・ストーリー」

2009-04-06 06:33:06 | 映画の感想(は行)

 (原題:BEDTIME STORIES )アダム・サンドラーの一人舞台みたいな映画である。大手ホテルに勤める主人公は、今は亡き彼の父親がこのホテルの創始者であるにもかかわらず、当人は下っ端の設備メンテナンス係。女にも無縁な冴えない独身男だ。そんな彼が姉の子供たちの面倒を見ることになる。

 もとより子守りなんかしたことのない彼は、寝る前の甥と姪に“お話”を語って聞かせる際に、自分の面白くもない境遇と身も蓋もない願望を勝手に“お話”に仕立て上げて喋りまくる。ところが、何とそれらが次々と実現化することに驚くのであった・・・・という、ディズニー製作のお手軽ファンタジーである。

 本作の敗因は、どうしてこの“お話”が現実のものになるのか、キチンと説明されていない点だ。別に“そうなることを科学的に証明せよ”などと野暮なことは言うつもりはない(爆)。だが、単なるベッドタイム・ストーリー(正確には子供たちが口に出して言うこと)が現実化するという荒唐無稽な設定を持ってくるためには、理にかなった“前振り”が必要なのではないか。具体的に言えば、かねてより寝る前の“お話”が現実と近くなっていたというモチーフを小出しにするべきだった。子供たちの母親がベッドタイム・ストーリーを全然していなかったということはないので、それは可能なはずだ。

 そして、どうして主人公が“お話”に加わることがその“現実化現象”に拍車を掛けることになったのか、その背景に少しでも言及することが不可欠ではなかったか。いくらファンタジーといえども、こうした最低限度のプロットの合理性は絶対必要である。それをすっ飛ばしているから、宙に浮いたようなホラ話にしかならないのだ。しかも、SFX満載で楽しませてくれるはずの“お話”の中身は、どこかで観たような画面をさしたる工夫もなく並べているばかり。監督アダム・シャンクマンの腕前は大したことがないと言わざるを得ない。

 では本作の売り物は何かというと、冒頭に書いたように主演アダム・サンドラーのワンマンショーである。口八丁手八丁の胡散臭いキャラクターを力演しているが、そもそも本国では絶大な人気を誇るというサンドラーのパフォーマンスも、日本の観客にはお馴染みではない。頑張るほどに空回りしている印象しか受けず、中盤までくると観ていて面倒臭くなってしまう。ケリー・ラッセルやガイ・ピアースといった脇の面子も悪くはないが、彼らの持ち味を活かす演出が見当たらない。

 凡作として片付けたいシャシンだが、唯一気になったのは全編に流れる80年代ヒット曲の数々。別にこれらのナンバーが個人的に好きなわけでは全然無いが、少なくとも画面には合っていたと思う。これもサンドラーの趣味なのだろうか(^^;)。
コメント
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