元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

最近購入したCD(その16)。

2008-10-26 07:14:49 | 音楽ネタ
 前回に引き続き女性ヴォーカルを3枚紹介したい。なお前はジャズ系だったが、今回はロック/ポップス系だ。まず最初は元スウェードのギタリスト、バーナード・バトラーがプロデュースと作曲を手掛け、さらにバックの演奏にも参加している、英国ウェールズ出身の若手シンガー、ダフィーのファースト・アルバム「ロックフェリー」。パッと聴いた感じは、あまりにも60年代の黒人系ポップスと似ていて驚く。白人離れした・・・・と言っては語弊があるだろうが、深くてダークでソウルフルな歌声には誰しも魅了されてしまうだろう。



 もちろんただの懐メロ趣味では決して無く、B・バトラーらしいキレの良い展開や陰影に富んだ美しいメロディは、まさしく現代のポップスを演出している。何かと比較されるエイミー・ワインハウスよりも広範囲な支持を集めそうな素材だ。詞の内容も実に泣かせる。蓮っ葉のようで実は誰よりも純情なヒロインを表現する彼女のセンシティヴな実力が、前面開花していると言って良いだろう。全編に渡って捨て曲は見つからず、どのナンバーもメリハリに富んだ哀愁のストーリーがシャープかつ着実に編み上げられており、一点の緩みもない。特に本国ではNo.1ヒットになった「マーシー」や、プロモーション・ビデオも秀逸な「ウォリック・アヴェニュー」などは今年度ポップス・シーン屈指の佳曲と言えよう。録音はイマイチながら、実売2千円を切るプライスも相まって、お買い得感は相当高い。

 次に紹介するのが、カリフォルニア州出身の新人ロッカー、ケイティ・ペリーのデビュー作「ワン・オブ・ザ・ボーイズ」。とにかく若い頃のマドンナとアヴリル・ラヴィーンが合体したような元気の良さ、そして屈託の無さに思わずニヤついてしまう快作だ。どの曲も見事にストレートアヘッドな展開で、しかも鋭い研磨感を併せ持ったノリの良さは聴き手を掴んで離さない。少しハスキーでコクのある声は、絶妙のブラックなフィーリングを伴って嫌味がなく、聴き疲れることもない。ギター主体のロックが中心ながら、カントリー・ミュージックやヒップホップなどのテイストも上手く織り込み、アルバム全体に緩急付けた構成も納得だ。話題になっている歌詞の過激さもかえって愛嬌タップリである。



 彼女は20代前半の若さだが、実は10代の時から業界から目を付けられていたという。しかしスグにはデビューさせず、しっくり育ててキャラクターや曲作りを“熟成”させた後に、満を持しての登場となったらしく、いわば下積みが長い。だからこそ、一見軽い印象ながら決して浮ついた感じはなく、それどころか地に足が付いたような安心感をも聴き手に与えるのだろう。大ヒットした「キス・ア・ガール」をはじめ楽曲の練り上げは万全で、乾いた明るさを前面に出した録音も昨今のポップス系では良質の部類である。

 さて、私はブラジルのポップスにあまり興味がない。もちろんジルベルトやジョビンなどの往年の名盤はチェックしているが、ポップスは英語で歌われるのが最も自然だと思い込んでいる当方にとって、現行のブラジル音楽シーンは縁遠いものであった。しかし、そんな私が思わず買ってしまったディスクがある。それが新人歌手アレクシア・ボンテンポのファースト・アルバム「アストロラビオ」だ。実はショップの試聴コーナーで何気なく聴いたところ、速攻で購入を決めてしまったのだ。何よりこのクリーミーな声質が素晴らしい。実に滑らか、そして自然体、適度な潤いを伴ってスーッと広がっていくような、本当に魅力的なヴォイスなのだ。歌い手の知的で抑制の効いたキャラクターも十分伝わってくる。



 楽曲もそんな彼女の声を活かすような選定だ。もちろんポルトガル語中心に歌われているが、ポリスの「ロクサーヌ」やスティービー・ワンダーの「マイ・シェリー・アモール」のカバーなど英語のナンバーもある。そしてそれがインティメイトな暖かさを伴った爽やかなアレンジにより、無理なく聴き手に迫ってくる。それどころかこれらの曲にはこんなチャームポイントがあったのかと、目から鱗が落ちる思いである。録音も良好で、低音は出ていないが高域はウェットな味を付与したままグンと伸びている。音場もけっこう広い。とにかく、秋の夜長にピッタリの冴え渡った充実作である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする