(原題:男児本色)物語に深みはないが、活劇場面の釣瓶打ちで満腹度は決して低くはない。「香港国際警察/NEW POLICE STORY」のベニー・チャン監督の新作。香港に舞い戻ってきた強盗グループ。かつて1億米ドルを奪い、たくさんの人々を巻き添えにした札付きの連中と、彼らに婚約者を殺された刑事、凄腕の警部補、強盗団と接点がある元警官の弟である巡査の3人との激闘を描く。
善玉3人にはそれぞれの事情があるとはいえ、観る者にグッと迫ってくるようなリアルな内面描写は見受けられない。取って付けたような設定だ。捜査の仕方も荒っぽい。スタンド・プレイの連続で、これではいかに香港映画とはいえ周りの理解は得られないだろう。前半の酒場での大暴れなんか、よく考えると作劇上ほとんど意味がない。クライマックスの警察署での大掛かりな乱闘にしたって、有り得ない展開の連続だ。こういうネタにしては上映時間が長過ぎるのもマイナスだと思う。
しかし観ている間はあまり不満を覚えないのは、何と言っても悪役の存在感である。ウー・ジンやアンディ・オンが演じる犯人グループは、とにかく腕っ節が強い。警官が何人掛かってこようと、顔色一つ変えずブチのめしてしまう。しかも頭が切れて神出鬼没の立ち回りに当局側はキリキリ舞いだ。
邪魔する者は何のためらいもなく始末してしまうかと思えば、人質を殺さないなどの“彼らなりの美学”が感じられるのも面白い。それらのバックグラウンドについてハッキリと言及していないのも賢明だ。丁寧に描くと分かりやすい反面、彼らの凶行の“限界”も見えてしまう。あえて明示しないことにより、次にどう出るか分からない不気味さを醸し出していると言えよう。
肝心のアクション・シーンだが、これはもう程度を知らないような徹底ぶりだ。決して必然性のあるアクションではなく、いわばアクションのためのアクションなのだが、個々の描写のヴォルテージの高さは観る者に突っ込むスキを与えない。高いところから落下させたり、燃えさかる火の中で暴れさせたりと、人権無視も甚だしい所業の数々。香港製活劇はこうでなければならない(笑)。
主演のニコラス・ツェーとジェイシー・チャン、ショーン・ユーは、悪役に比べて重みが足りない。それほどケンカが強いようにも思えない。単に若いからではなく、貫禄が不足している。彼らに限らず香港映画界は存在感のある“主役を張れる若手”が育っていないように思える。いわゆる香港四天王の時代は過去のものになりつつあるので、ここらで奮起してもらいたいところだ。