元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「TOKYO!」

2008-10-02 06:50:00 | 映画の感想(英数)

 ミシェル・ゴンドリー監督による第一話「インテリア・デザイン」のみ面白い。地方から上京してきた駆け出しの映画監督(加瀬亮)とその恋人(藤谷文子)。友人(伊藤歩)の狭いアパートに居候しながら住居を探すが上手くいかない。彼の方は映画を作っているといっても才能のカケラもないのだが、そんな彼が作るカスみたいなフィルムでも興味を持って観に来る客が少なからずおり、果てはお褒めの言葉までもらってしまうという不条理。菓子店のバイトもソツなくこなし、軽佻浮薄な生き方が板に付いてくる彼に対し、正攻法に生活基盤を整えようとするが持ち前の不器用さで行き詰まってしまう彼女の運命は・・・・。

 中身なんかよりも軽いノリで世の中を渡っていく方が何かとお得で、地道に生きようとするとバカを見るという、都会の皮相的な一面をシニカルなタッチで描いた本作。実はその捉え方も“皮相的”なのであるが、観客にその疑問を強く抱かせないだけの語り口で(特にラスト近くのシュールな展開は光る)、最後まで違和感なく付き合える。

 下水道に住む怪人(ドゥニ・ラヴァン)を描いたレオス・カラックス監督の「メルド」はまったく面白くない。展開が冗長で演出にメリハリが皆無。何を言いたいのか分からないし、キャストの演技も遊び半分。そして意味もなく長い。デビュー当時は斬新な映像感覚で評価が高かったこの監督も今や才気の片鱗も見られなくなり、時の流れというものは本当に残酷であると思った。

 ポン・ジュノ監督の「シェイキング東京」は、引きこもりの中年男(香川照之)が10年ぶりに外に出てくる話。これも大したシャシンではなく、そもそも舞台が東京である必然性がまったくない。都合良く地震が起きるのも意味不明。印象的なのはピザ配達人に扮する蒼井優のガーター姿ぐらいだ(笑)。

 こういうオムニバスものは各パートに通じてピシッとしたコンセプトの共有が必要なはずだが、それがほとんど成されていない。ただ“そこそこ有名な監督に、東京を舞台に撮らせてみました”というレベル。とことんダメだった「Jam Films」シリーズみたいなのよりは少しはマシかもしれないが、ハッキリ言って、この程度でカネ取って劇場公開する価値はないと思う。テレビの深夜放映かネット配信ぐらいで十分なネタではないだろうか。
コメント
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