6月のB定期、事情により水曜日に振替。ステージ裏のP席は変わらないが、いつもよりセンター寄り。これって、もしかして正面テレビカメラの射程範囲ではないか?と思うと緊張度が高まる。今回は好きな庄司紗矢香さんが出演するので、相当気合を入れて来てるのだが、ますます寝落ちできない・・・。
公演としては、ノセダ・シリーズ並びに22-23シーズンの最終幕にふさわしい充実のプログラムと演奏だった。
冒頭のレスピーギは、私が馴染んでいるバッハと似て非なる音楽のように聞こえた。純粋で崇高であるのは同じだが、よりエレガント。あまりの心地よさに、意識が遠のき始めたが何とか踏ん張った。1曲目から相当の満足感。
そして、紗矢香さんの登場。2018年のN響との共演以来なので5年ぶりだ。舞台に現れたピンクのシャツを着た紗矢香さん、相変わらず本当に細身で華奢なかたである(P席なので後ろ姿でそのスリムさがよくわかる)。ただ、醸し出す雰囲気は、これまでの印象と違っていた。(当たり前かもしれないが、)より落ち着いて、大人の余裕のようなものを感じた。
曲のレスピーギのグレゴリオ風協奏曲は初めて実演に接する音楽。オーケストラとの掛け合い、ヴァイオリンの独奏、オケの見せ場、それぞれが織り込まれていて、しかも初めての人にも比較的聴きやすい楽曲だ。紗矢香さんのヴァイオリンは、以前と変わらず、シャープで安定している。グレゴリオ風ということだが、音楽的なことはわからない私には、むしろ第1、2楽章では北欧的な寂寥感を覚え、シベリウスのヴァイオリン協奏曲を思い起こさせるところもあった。紗矢香さんの音色は、以前よりも洗練され深みあるものに感じたのは、決して、外見に惑わされたわけではないと思う。色香を感じるといったら怒られるかもしれないが、そういう感じである。
第3楽章ではフィナーレに向けてノセダさんの気合や唸りが凄まじい。ただでさえ大柄な上に、腕の長さも最大限活用するのでさらに大きく見える。そして鬼のようなご面相で、ぐいぐい迫ってくるから、30mは離れているはずなのだが、正面に坐した私には怖いぐらい。その横で二回りも、三回りも小柄な紗矢香さんがヴァイオリンを弾いている絵柄はなんとも対照的である。だが、紗矢香さんから沸き立つオーラというか、感じる気迫は全然、ノセダさんに負けてなく、リング上の格闘にも見えた。ナマ演奏会体験ならではである。
アンコールはバッハ、無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調ー第3曲サラバンド。内省的な染み入るような音色を満喫した。
そして、後半のラフマニノフの交響曲第一番。これも初めて聞く曲だと思うのだが、シーズンとノセダ・シリーズの2つを締めくくるのに相応しい超絶演奏だった。ノセダさんの全身全霊をこめた指揮にN響メンバーが必死で応えるなかから、音圧で体が浮くか、押しつぶされるではないかと思うほどの、パワフルでダイナミックな音が生まれていた。生でオーケストラを聴く醍醐味と言っていい。
音楽自体は、私自身、ラフマニノフの交響曲といえば交響的舞曲(これは交響曲というのかは?)ぐらいなので、何ともコメントできないのだが、民族的な香りやロマンティックな調べが織り込まれ、ラフマニノフっぽさを至る所で感じ、聴きごたえある音楽だった。初演が大失敗だったというのが信じられない。
弦陣の厚く深みあるアンサンブルも良かったのだが、個人的にしんみりきたのは第3楽章のクラリネットの松本さんの調べ。柔らかく、優しい音色に耳をそばだてた。
当然のごとく、終演後は大きな拍手が寄せられた。私も充足感一杯になりながら、ノセダさんや奏者の皆さんに拍手を送った。
また、来シーズンも期待しています。
2022-2023シーズンBプログラム
第1988回 定期公演 Bプログラム
2023年6月21日(水) 開演 7:00pm [ 開場 6:20pm ]
サントリーホール
バッハ(レスピーギ編)/3つのコラール
レスピーギ/グレゴリオ風協奏曲*
ラフマニノフ/交響曲 第1番 ニ短調 作品13
指揮:ジャナンドレア・ノセダ
ヴァイオリン:庄司紗矢香*
No. 1988 Subscription (Program B)
Wednesday, June 21, 2023 7:00pm [ Doors Open 6:20pm ]
Suntory Hall
Program
Bach / Respighi / Three Chorales
Respighi / Concerto gregoriano*
Rakhmaninov / Symphony No. 1 D Minor Op. 13
Artists
Conductor:Gianandrea Noseda
Violin:Sayaka Shoji*