ヤマトの宅急便が値上げや時間指定配達のサービス縮小など、昨今、物流業界のニュースでメディアが賑わっている。ネット通販の拡大や共働き夫婦の増など社会・経済環境の変化が、これまでの物流の世界を大きく変えているようだ。物流の世界には全く素人なので、何が起こっているのか知りたく手に取った。
物流ビジネスに長く身を置いた専門家ならでの平易で分かりやすい解説で、非常に勉強になった一冊であった。物流がソフトウエア、インフラ構築・人の3大要素で成り立っていること、アマゾンのビジネスモデルがいかに破壊的であるかということ、楽天モデルのようなモール型モデルの強みと弱み、物流の世界に肝となるラストワンマイルの重要性と言ったところが、素人にも分かるように具体的に書かれている。深い洞察もさることながら、日本の物流業への愛情を感じ取れるのも気持ちが良い。
読んでいて感じたのは、日本で物流と言えばヤマト運輸、佐川急便、日本郵便といった物流事業者が頭に浮かぶが、本書で書かれているのは主にアマゾンとそれに対抗する米国ウオールマート、日本の楽天、ヨドバシカメラと言った小売り業のネット通販ビジネスである。ネット通販が物流と切っても切れ離せない関係にあるためであろうが、物流事業そのものはやはり黒子という位置づけになるのだろうか。
アマゾンの巨大さ、強さについて、まざまざと見せつけられる。デジタル化による規模の経済、徹底した顧客主義が、既存の常識、秩序を覆していく。この行きつく先はどこになるのだろうか。その便利さを享受している一人であるのだが、うすら怖さも感じる。
【目次】
序章 アマゾンが変える世界―経済の地殻変動が始まった
第1章 物流のターニングポイント―ネット通販と宅配便の異変
第2章 巨人アマゾンの正体―ウォルマートvsアマゾンの仁義なき戦い
第3章 物流大戦争の幕開け―アマゾンと競い合うための3つの戦略