20代後半から30代前半にかけては、いわゆる企業小説の類なるものを読んだが、40に入ってからは殆ど読まなくなってしまった。企業小説では社内の人事抗争などの社内ポリティックスが描かれることが多いが、軽重こそあれ、日々会社で似たような場面に遭遇しているのに、わざわざOFFの時間に同類の追体験をすることに疲れてしまったからである。
本書は偶然、図書館の返却本のコーナーで手に取った。IT企業の企業買収攻勢に対すする防衛というエピソードに、世代論を掛け合わせ、現代をうまく切り取った企業小説になっている。帯にあった「痛快エンタメ小説」というコピーに相応しい出来のいい作品だ。
(あらすじ・・・Amazonより引用)
ときは2004年。銀行の系列子会社東京セントラル証券の業績は鳴かず飛ばず。そこにIT企業の雄、電脳雑伎集団社長から、ライバルの東京スパイラルを買収したいと相談を受ける。アドバイザーの座に就けば、巨額の手数料が転がり込んでくるビッグチャンスだ。ところが、そこに親会社である東京中央銀行から理不尽な横槍が入る。責任を問われて窮地に陥った主人公の半沢直樹は、部下の森山雅弘とともに、周囲をアッといわせる秘策に出た―。胸のすくエンタテイメント企業小説。
(引用終わり)
ストーリー展開(特に落ちのつけ方)と登場人物の描写もよくできている。現実離れしたところもあるが、リアリティも満載で、組織の理屈、銀行の行動原理がよく分かる。
メインキャラクターであるバブル世代の半沢部長は、同世代としてはいささか格好よすぎるが、同じサラリーマンとしてあんな筋を通した仕事をしてみたいものだと、小説の話とはいえ、素直に啓発された。