NHKの5回シリーズで放映された歴史ドラマ「負けて、勝つ ~戦後を創った男・吉田茂~」が土曜日に終了した。吉田茂を中心に戦後からサンフランシスコ講和条約までの日本を描いたこのドラマ、なかなか力作で良い出来だった。
戦後、焦土と解した敗戦国日本の舵を、米ソ中などの大国の思惑が交錯する中、どう取るか、極めて難しい局面であることは容易に想像できる。吉田は、GHQ、ワシントン、内政、国民等のステークホルダーの力関係を睨みながら、日本のあるべき道を探る。吉田茂については、ワンマン宰相として、賛否両論あるものの、吉田ぐらいの胆力を持った政治家でなければ、とてもこの難局を乗り切れなかったであろうことが分かった。
独立を勝ち取るために、講和条約と並行して日米安保条約を結んだのは、未だ、現在の日本に直接つながる大政治決断だったわけだが、その背景も良く分かる。全面講和論と単独講和論のせめぎ合いなど、戦後の日本の繁栄の前提となる枠組みを作ったことの背景も良く理解できる。
歴史書や政治経済の読み物を読んだだけでは、理屈としては理解できても、よっぽどの想像力がなければ、肌感覚としてはなかなか理解しずらいことがある。ドラマや映画というのは、登場人物が限定され、ある特定の視点からの場面の切り取りという限界はあるものの、歴史は人間が作っているということ、人間は限定された情報や思考の枠組みの中で、(動機は何であれ、その人にとっての)最善を取ろうとしていることが、実感として理解できるという意味で、極めて優れたメディアだと、再認識した。
あえて、付け加えるなら、ドラマなので完璧はないことは承知の上で、渡辺謙が演じる吉田茂はちょっと格好良すぎるなあ。美化しすぎではと思うところは正直あった。
今は既にこの時代から60年以上が経過しているとはいえ、安全保障についてはこの枠組みの延長だ。沖縄基地の問題もこの時から生まれている。若い人を含めて多くの人に見て欲しいドラマだった。
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