その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

「札幌ラーメン」ではない美味しい札幌駅横のラーメン屋さん:らぁ麺 月輪

2024-07-01 17:45:48 | 旅行 日本

先月、年度初めのパートナー会社との気合合わせや自社営業所のメンバーとの業務課題議論で1泊2日の札幌出張。札幌駅近のビジネスホテルに泊まったのですが、ホテルのロビーに置いてあった自家製の周辺地図に紹介されてたラーメン屋さんに飛び込み。

なんか外見はどう見てもガード下の飲み屋さん。中に入っても、一升瓶が並んでたり、壁に貼ってあるお品書きもおつまみばかりで、「あれ、店間違えたかな?」。まだ時間も18時前後で客は誰もおらず、カウンター内で仕込みをしている女将さんに、「この店、ラーメンやってますよね?」とおそるおそる確認。「やってますよ、ハイ」と言われて、手渡されたメニューには5種類ほどのラーメンがあったので、鶏玉醤油ラーメンなるものを注文。

こんな時間帯に、ラーメン単品注文は迷惑だったかな?と多少罪悪感を感じつつ、店内を見回す余裕もできてきた。席はカウンダ―だけの10席程度のこじんまりしたお店。山小屋風に木目調の内装なので、とっても気分が落ち着く。こんな空間があると知っていれば、ラーメンも良いが、むしろウイスキーや日本酒をちびちびやりたくなる気分。

ラーメンは思いのほか早く5分ぐらいで出てきた。いわゆる東京人が勝手に想像する札幌ラーメン(豚骨と野菜の出汁スープ、やや太めのちぢれ麵)とはかなり様子が違っていて、東京にありそうな鶏ガラをベースにしたちぢれ細麺。透き通るようなスープ。それが、実に美味かつ私好み。とっても丁寧に作られているのが食べていてよく分かる。

スープ含めて完食して、お箸を置いて、心の底から「おいしゅうございました。ごちそうさまでした」。

らぁ麺 月輪 - さっぽろ(札幌市営)/ラーメン | 食べログ (tabelog.com)

2024年6月5日


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特別展「ほとけの国の美術」@府中美術館

2024-06-26 08:56:55 | 美術展(2012.8~)

(5月初旬に訪れた美術展の投稿忘れメモ)

会期最終日に府中美術館に特別展「ほとけの国の美術」に足を運ぶ。江戸時代の仏教関連の作品を中心にした展示である。

仏教関連の美術品は室町時代を境に、それ以降の品々にスポットライトが当たることは少ない気がするが、江戸時代は寺請け制度の下、表面的には「国民」皆仏教徒だったわけで、様々な仏教美術が残されていたようだ。

今回の展示では、来迎図、地獄絵、涅槃図が特に見ごたえあった。江戸時代のものなので、保存状態も良く、色彩も鮮やかだ。

土佐行広「二十五菩薩来迎図」(重要美術品 京都市・二尊院蔵)は優しい菩薩様が心を和ませてくれる。宇治の平等院を思い起こさせる。土佐行広はやまと絵の流派である土佐派の実質的な始祖である。

「地獄極楽図」(金沢市・照円寺蔵)は、地獄の様々なシーンが描かれる。子供の時に祖母が「悪いことすると死んだあと地獄に落ちて苦しむ」という話をやたら聞かされていたので、絵を見ながら祖母が思い出された。

「八相仏涅槃図」(名古屋市・西来寺(下の写真は絵葉書から))は個人的にも好きなテーマ。老若男女問わず、加えて動物も入って、仏様の他界を悲しむ世界観はとってもアジア的で、感覚的に馴染む。悲しい絵ではあるのだが、柔らかな温かさを感じるのが不思議だ。

過去に府中美術館で企画された「動物の絵」も多数展示されていた。徳川綱吉の絵もあった。日本の動物の絵は、西洋画のそれと違って昔から「かわいい」。画家の動物への愛がにじみ出ている作品が多く、ペットには縁がない私でも癒される不思議な力を持っている。

府中美術館の企画・展示は、国宝や重要文化財作品が満載ではないけども、公的な文化財指定は受けて無くても見どころある作品を興味部会切り口で紹介してくれるので、とっても楽しめる。各作品についた解説も適度に柔らかくて面白い。キュレーションの重要性を教えてくれる。

(2024年5月6日訪問)


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鈴木優人×イザベル・ファウスト NHK交響楽団 @調布国際音楽祭

2024-06-24 07:11:54 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

昨年は都合つかず訪れること叶わなかったけど、12年目を迎えるという調布の音楽祭に今年は参戦です。有料の演奏会も年々充実し、選ぶのに迷ってしまうのですが、今年はイザベル・ファーストさんが出演されることもあり、この音楽祭の顔でありエグゼクティブプロデューサーである鈴木優人さん指揮のN響の演奏会へ。

初っ端から、今日の目玉とも言えるファウストさんが登場。数日前にB定期のサントリホールで聴いたばかりですが、その時はシューンベルグのヴァイオリン協奏曲が私には難しすぎて、せっかくのファウストさんの真価も堪能し切れず。今回はベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。聴き慣れた曲でもあり、期待大でした。

そして、期待通りの素晴らしい演奏でした。ファウストさんのヴァイオリンの音色は繊細で、様々な要素の最高のバランスの上に成り立っているように聴こえます。とっても知的でありながら、情熱的でもある。柔らかくもあれば、堅実さを見せることもある。愁いがあれば、歓びにも満ちている。発せられる一音一音に耳をそばだてます。音が不思議なほど素直に、体の中にしみ渡って行くような感覚でした。

彼女にとってはこれまで何百回、何千回と演奏した曲だとは思うのですが(それでも譜面台に楽譜が置いてあったのはちょっと不思議でした)、私にはまさに一期一会のファウストさんによるベートーヴェンのヴィオリン協奏曲。背筋伸ばして、手を握りしめて聴きました。

N響の演奏も素晴らしい。特にファウストのヴィオリンと木管陣の柔らかな音色が、ホール内で溶け合う化学反応にはうっとりと別次元に連れて行かれるようでした。第一楽章後半のカデンツァではティンパニーの伴奏が入りました。

終演後はこのホールでは聞いたことのないボリュームでの、賞賛と感動の拍手で会場は覆われました。ファウストさん、ヴァイオリンの素晴らしさは言うまでもありませんが、拍手に応える姿やオーケストラへの賞賛などの仕草もとってもチャーミング。大拍手に応えてアンコールはシャルル・オーギュスト・ド・ベリオ作曲12の情景作品109第12番コンソレーション(なぐさめ)でした。

後半は、B定期と同じ曲目ですが、私は定期の後半を聴けなかったので、丁度良かった。ラストのシューベルト交響曲第5番は全く初めて聴く曲でしたが、構造もはっきりして、音楽としてもとっても聴き易い楽曲。N響の弦のアンサンブル力や管楽器の美しい音色を堪能しました。

鈴木Jr.(お父さんも聴きに来られてました)もご自身がエグゼクティブプロディーサーとなっている調布国際音楽祭で、N響を自ら指揮されるということで、いつも以上に気合入っているように見えました。マルチな才能を見せる鈴木さん、これからも音楽祭の充実を期待したいと思います。

蛇足ですが、今回、ファーストさんということで、最高ランク席を購入。前から10列目という両席だったこともあり、市民ホールではありますが、細部のニュアンスを含めとっても良く聴こえました。正確に数えたことは無いけど、N響には過去100回以上の演奏会に足を運んでいるはずですが、指定席はNHKホールの3階席とサントリーの舞台後ろ席なので、う~ん、やっぱり高い席は高い席ならではのことがあると納得。回数減らして良席を取りに行くのが良いのか、安席で回数を楽しむのか、悩んじゃいますね。

 

鈴木優人×イザベル・ファウスト
NHK交響楽団 in Chofu

2024年6月23日(日)開演 2:00pm [開場 1:15pm]
調布市グリーンホール 大ホール

ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
バッハ(ウェーベルン編)/リチェルカータ
シューベルト/交響曲 第5番 変ロ長調 D. 485

指揮:鈴木優人
ヴァイオリン:イザベル・ファウスト

Sunday, June 23, 2024 2:00p.m.
Chofu City Green Hall, Large Hall

Conductor : Masato Suzuki
Violin : Isabelle Faust

Beethoven / Violin Concerto D Major Op. 61
S. Bach / Webern / Ricercata
Schubert / Symphony No. 5 B-flat Major D. 485


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2年ぶりのFC東京、ナマ応援。vsジュビロ磐田

2024-06-22 07:51:16 | 日記 (2012.8~)

(1週間遅れの観戦記)

2年ぶりにFC東京の応援に味スタへ。ジュビロ磐田と。

子供が小学生の時は、ホームゲームは近所の子供たちと一緒にほぼ皆勤だったんだけど、ここ10年はすっかり不良サポートナーに。

もうナイターには最高の爽やかな初夏の日で、観戦には最高の日よりです。

”You'll Never Walk Alone”を歌って、試合が始まり、次々と色んな応援歌を歌う。久しぶりだ。(ちなみに、イギリスに赴任する前は、”You'll Never Walk Alone”は東京の専用応援歌かと思い込んでいたのですが、当地でリバプールのゲームを観ていたら、まさにこの歌が歌われていて、かなりのショックを受けたのも今となっては懐かしい)

試合は前半は押し気味に進んでいるように見えつつも全然、ゴールを感じさせる攻めはなく、逆に1点を先行されて、超ストレスフルな展開。

ハーフタイムに、偶然、ご近所さんと出くわし、これはびっくり。子供どうしが1学年違いのお友達なので、昔は一緒によく応援に行った人。なんと、子供が成長した後も、しっかりとサポーターを続け、今でも年間シートの指定席で応援されているとのこと。流石だわ。

後半もイライラする展開が続いたが、後半38分にようやくフリーキックから若手の安斎選手(私は殆ど知らず)がヘディングでゴールを決め、やっと追いつく。ここからは、東京の怒涛の攻めが始まって、応援サイドとしてはこれほど楽しい時間は無かった。結果は残念ながら引き分けで終わったが、久しぶりに来たワイには十二分の楽しさ。

ピッチ全体が見渡せること、現場ならではのサポーターの一体感、ライブ観戦ならではを満喫できた。

また来たいのだが、問題は時間とお金。やりたいこと、行きたいとこが多すぎて、時間とお金という有限資源をどう振り分けるのか。悩みは尽きない。楽しいこと多過ぎるわ。

2024年6月16日 18:00試合開始 @味の素スタジアム


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6月N響B定期:日本人若手指揮者競演シリーズ、第3弾は鈴木優人さんのウイーンプログラム(前半のみ)

2024-06-21 17:40:43 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

(公開するほどの内容でも無いのですが、記録のため)

本シーズン最後のN響定期であり、6月定期日本人若手指揮者競演シリーズ第3弾。鈴木Jr.の登場でしたが、残念ながら所要により前半のみ参加。

この日はウィーン所縁の作曲家のプログラムで、前半はウエーベルンとシューンベルグの20世紀の作品。

個人的には最近でも類を見ない大苦行となりました。私には音楽が難しすぎて、理屈としても感覚としても、私の理解の範疇超えていて、無条件降伏状態。シューンベルグのヴァイオリン協奏曲は、イザベル・ファーストさんが奏でるヴァイオリンの美音やハイレベルな技巧は感じ取れましたが、感想を言葉にするには難易度高すぎで、手も足も出ない見逃し三振。

鈴木ジュニア、N響、ファウストさんのコンビは週末に調布国際音楽祭に行くので、そこでリベンジ予定。ヴァイオリン協奏曲もシューンベルグからベートーヴェンに変わりますので、まだこちらの方は楽しめそう。

今シーズンもN響には大変お世話になりました。ルイージさんとのコンビも更に成熟度が上がっていると思ったし、コープマンさん、ソヒエフさん、エラス・カサドさん、ヤノフスキさん、エッシェンバッハさんらの名だたる欧米指揮者、尾高さん、ミッキー、原田さん、沖澤さんらの日本人指揮者など、バライティに富んだ出演者で毎回、異なった楽しみを味合わせてくれました。来シーズン、かなりの値上げとなったのはお財布にかなり応えますが、値上げに相応しい更なる満足度高い定期演奏会を期待したいと思います。

 

定期公演 2023-24シーズン
第2015回 定期公演Bプログラム
2024年6月20日(木)開演 7:00pm

サントリーホール

ウェーベルン/パッサカリア 作品1
シェーンベルク/ヴァイオリン協奏曲 作品36
バッハ(ウェーベルン編)/リチェルカータ
シューベルト/交響曲 第5番 変ロ長調 D. 485

アンコール
6/20:ルイ=ガブリエル・ギユマン/無伴奏ヴァイオリンのためのアミュズマン 作品18 ー 第12曲 アルトロ
ヴァイオリン:イザベル・ファウスト

指揮 : 鈴木優人
ヴァイオリン : イザベル・ファウスト

 

No. 2015 Subscription (Program B)
Thursday, June 20, 2024 7:00pm
Suntory Hall

Conductor : Masato Suzuki
Violin : Isabelle Faust

Webern / Passacaglia Op. 1
Schönberg / Violin Concerto Op. 36
S. Bach / Webern / Ricercata
Schubert / Symphony No. 5 B-flat Major D. 485


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中原淳『働く大人のための「学び」の教科書』(かんき出版、2017)

2024-06-19 07:43:22 | 

経営学習論や人材開発について研究する東大の准教授の中原淳さんが、社会人向けの学び方について、平易に解説したノウハウ本。構造的でわかりやすく、具体例も記載されているので、1から系統的に学ぶこともできるし、自分にできてるところ/できてないところのチェックリストとしてもいいと思う。

既知のこともあるものの、おさらいも含めて私なりの学びポイントを以下、抜粋。( )内は個人的つぶやき。
・3つの行動原則〈OS〉×7つの行動〈アプリ〉
・3つの行動原則:1)背伸びの原理、2)振り返りの原理、3)つながりの原理(←使えるフレームワーク)
・「大人の学び」7つの行動:1)タフアサイメント=タフな仕事から学ぶ、2)本を1トン読む、3)教えられて学ぶ、4)越境する、5)フィードバックを求める、6)場をつくる、7)教えてみる(←使えるフレームワーク)

・ハードル:コンフォートゾーン→ストレッチゾーン→パニックゾーン。ハードルは低すぎても、高すぎてもダメ。
・何の背伸びから始めるか?①楽しみを感じること、②感謝されること(←なるほど)
・まずやってみることを大切にする。(←これ私の自論、めちゃ同意!)
・振り返りが経験学習の鍵。アクション無くしてリフレクションなし。リフレクション無くしてアクション無し。(←たしかに)
・人は一人ではなかなか変わることのできない「脆弱な存在」。人とのつながり、人を鏡として変わっていく。(←たしかに)
・大人の学びの基本は「自腹」。痛みを伴う。そうした学びこそが次のキャリアを切り開く。(←これ私の自論、めちゃ同意!)
・セミフォーマル/フォーマルな学びで大切なこと:「何を学ぶか」も重要だが「誰から学ぶか」も極めて重要(←これは目から鱗だわ)

 


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6月N響C定期:日本人若手指揮者競演シリーズ、第2弾は沖澤のどかさんのフランスプログラム

2024-06-18 07:20:19 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

6月のN響、若手日本人指揮者競演シリーズ第2弾は、初めて実演に接する沖澤まどかさん。フランスもののプログラムも魅力的で、楽しみにしていました。

ステージに現れた沖澤さん、想像以上に小柄な方でしたが、姿勢よく堂々とされています。そして、指揮ぶりも自信あって迷いを一切感じさせない確信に満ちたものでした。古いですが漫画「ドカベン」の里中投手につけられた「小さな巨人」というニックネームを思い出すほど。

イベール<寄港地>は冒頭から香るようなオーケストラの優雅な響きにうっとり。ちょっと私自身が夏バテ気味の体調もあって、あまりの心地よさにかなり意識が遠のくほどでした。第2曲の吉村さんのオーボエも異国情緒満載で美しい。全曲通じて、まさに各寄港地の情景が脳裏に浮かんでくる演奏でした。

2曲目のラヴェルの<左手のためのピアノ協奏曲>は過去に2回は生で聴いていますが、未だ聴きどころ良く分かっていません。それでも、デニス・コジュヒンさんのピアノは、左手だけとは思えない力強さがあり、1音1音がとっても明瞭に聞こえてきました。オーケストラとの呼吸もぴったり。

そして、3曲目はドビュッシー〈夜想曲〉。1曲〈雲〉では、タイトルそのものですが、雲の上に横になって空中をのんびりとくつろいでいるような浮揚感。イングリッシュホルンの愁いを帯びた音色も夢の中で遠くから聞こえて来るやまびこのようでした。第2曲〈祭〉は切れよくワクワク。N響の金管、打楽器の活躍も光ります。第3曲〈シレーヌ〉は美しい女声合唱とともに、N響がキラキラと眩いような神秘的な世界を見せてくれました。

1時間ちょっとの演奏会ですが、無理無く自然体で、体に染み込むように吸収される純粋な音楽をN響と創り上げた沖澤さんの指揮ぶりは、本人の比較的淡々としているように見えた終演後の様子と併せて、返って凄みを感じるものでした。是非、もっといろんな楽曲を聴いてみたい方です。

定期公演 2023-2024シーズンCプログラム
第2014回 定期公演 Cプログラム
2024年6月15日(土) 開演 2:00pm(休憩なし) [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

イベール/寄港地
ラヴェル/左手のためのピアノ協奏曲
ドビュッシー/夜想曲*

指揮:沖澤のどか
ピアノ:デニス・コジュヒン
女声合唱:東京混声合唱団*

Subscription Concerts 2023-2024Program C
No. 2014 Subscription (Program C)
Saturday, June 15, 2024 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Ibert / Escales (Ports of Call)
Ravel / Piano Concerto for the Left Hand
Debussy / Nocturnes*

Conductor: Nodoka Okisawa
Piano: Denis Kozhukhin
Female chorus: The Philharmonic Chorus of Tokyo*


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鈴木智彦『サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』(小学館文庫、2021)

2024-06-16 09:02:10 | 

平成25年(2013)から平成30年の取材を中心に、アワビ、ナマコ、ウナギ(+シラス)を題材に密猟がどれだけ幅を利かせていて、密猟と暴力団の関係といった裏事情をレポートする。(2018年に単行本が出ているのだが、21年に2章が追加されて文庫化された)

読んでいて怖いのは、日々の食材が裏流通で成り立っているところもあること(平成15年7月の雑誌『養殖』における多屋勝雄の記事だと日本で流通しているあわびの45%は密猟の計算になるという(p15))。そして、我々もその価値連鎖の末端において消費者として加担しているということだ。

章によっては歴史的な背景の解説で、決して現在がそうであるわけではないこと(例えば、第4章の千葉県銚子市についての記事)、ジャーナリスティックな文体から来る事実と推測の区別がつきにくいことなどはある。また、この状況が日本の漁業の全体像を示しているわけではないだろう。なので、注意深く読むことは必要だが、こういう世界があって、我々も当事者であるということは、知っておいたほうがよい。

本書に記載とは別だが、歴史的に魚に多くの我々の栄養取得を頼ってきたにも関わらず、日本は世界的にも数少ない漁獲量が減り続けている国である(90年13万トン→19年5万トン)。先日、会社のSDGsの研修で知ったのだが、国連が定める目標持続可能な開発目標(SDGs)の目標14に「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」という目標があるが、日本はこの目標については赤信号との評価を受けている。日本の漁業には、漁業資源の乱獲など、多くの問題に目が向けられていない、乱獲しすぎで漁業の生産性が悪化しているといったことが背景にあるとのことだ。

自分たちが日々口にしているもの、お世話になっているものであるが故になおさら、それらの社会的背景は知っておいた方が良いと思う。

 

〈 目次 〉

第一章 宮城・岩手 三陸アワビ密漁団VS海保の頂上作戦
第二章 東京 築地市場に潜入労働4ヶ月
第三章 北海道 “黒いダイヤ”ナマコ密漁バブル
第四章 千葉 暴力の港・銚子の支配者、高寅
第五章 再び北海道 東西冷戦に翻弄されたカニの戦後史
第六章 九州・台湾・香港 追跡!ウナギ国際密輸シンジケート
新章一 再び東京 “魚河岸の守護神”佃政の数奇な人生
新章二 三たび北海道 密漁社会のマラドーナは生きていた


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フライングシアター自由劇場第二回公演「あの夏至の晩 生き残りのホモサピエンスは終わらない夢を見た」@新宿村LIVE

2024-06-14 08:05:09 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

串田和美さんのシェイクスピア劇は、2019年に「テンペスト」を拝見して以来。

「夏の夜の夢」(以下、「夏夜夢」)を解体・再構成した作品とのことで、意味ありげな長いタイトルと相まって、どんな芝居が展開されるのかとっても楽しみだった。

ベースの筋立てや登場人物は原作と変わらないながら、全体としてはアレンジ度も強い。なので、「夏夜夢」としても楽しめるし、原作とは別物の芝居としても楽しめる、一粒で二度おいしい舞台ともいえる。

一番大きなアレンジは、劇の冒頭と最後に出てくる串田和美演じる旅人(パック?)がソフトボール大の球体を弄りながら、過去の森の中での球体との遭遇が語られる。球体のメタファーは何なのか?終始、観るものに考えさせる。これと言った答えを見つけるのは難しいが、過去から現在までの時間軸をつなげたり、夢の世界と現実の世界を結ぶものとしての、球体なのかと思ったりした(映画「2001年宇宙の旅」の冒頭に登場する黒い石板やハムレットが持つ球体を思い出した)。

これ以外にも、後半、壁が崩れるところもあるが、否が応でも、ベルリンの壁、現在のガザ地区とイスラエルとの壁を思い起こさせる。

8名で「夏夜夢」を演じてしまった役者さんたちのパワーあふれる体当たり演技が強烈だった。串田和美さんと前回ノゾエ版「マクベス」でマクベス夫人を演じた川上友里さん以外はお初の方々だったが、皆さん、セリフ回し、動きともにしっかりしていて安定した舞台であった。一人二役は珍しくないだろうが、一人三役も四役もこなしていて、運動量だけでも相当だと思う。

串田さんの演出のやり方なのかどうかわからないが、台本にないアドリブシーンと思わせるところもいくつかあった気がしたのだがどうだったのだろうか。場面により、一瞬、役者さんが怯むように感じられた一方で、それが舞台の緊張感を高めた印象があって、観劇していてライブ感が満載で楽しい。

舞台装置はシンプルで、舞台中央奥に4つの扉が置かれ、その扉での出入りで場を表す。ナチュラルで無理がない。一方で、全般に中心的な場となる「森」は、役者さんの動きによって表せられるのだが、「夏夜夢」が初めての人にはちょっとイメージつきにくいかも。背景や衣装も白を基調にしながらも、劇中劇の舞台だけは原色系の非常に派手な色合いで舞台映えした。

この舞台、この後、ルーマニアの演劇祭で披露されるという。国際的にどう評価されるのか、興味深い。上演時間は2時間弱。あっという間の舞台であった。

(余談いくつか)
・観客層:シェイクスピア劇は女性観客多いが、今回は特に多かった気がした。8割がたは女性で占められていたように見えた。通常の観劇聴衆と雰囲気が若干異なる叔母様がたがいらした気がしたのは、元宝塚の大空さん目当てなのだろうか(憶測です)。

・新宿村LIVE:初めて訪れたが特異なシアターである。丸ノ内線の西新宿から7分ほど歩いて、小さなビルの地下4階(もしかしたら3階?)にある。階段でひたすら降りたところに小劇場がある。こりゃ、歳取るとつらいなあとか、火事になったらアウトだなと思ったりしたが、まさにアングラ劇場だ。

・アフタートーク:初めてアフタートークなるものに参加。稽古で大変だったところ、苦労したところなどが、役者さんから直接語られて楽しめた。球体の意味するところも各役者さんによって理解が違っており、別に共通の認識をもってやって演じているわけではないということも知る。串田さんの演出も相当自由度が高いようで、舞台を思振り返って思い当たるところもあった。

公演       フライングシアター自由劇場第二回公演
「あの夏至の晩 生き残りのホモサピエンスは終わらない夢を見た」
原作       ウィリアム・シェイクスピア 「夏の夜の夢」
翻訳       松岡和子
脚色・演出・美術             串田和美
出演       大空ゆうひ 川上友里 皆本麻帆 小日向星一
串田十二夜 谷山知宏 島地保武 串田和美

日程       2024年6月6日(木)-6月12日(水)
会場       新宿村 LIVE

スタッフ
照明:齋藤茂男
音響:市來邦比古
映像:栗山聡之
衣装:原田夏おる
演出助手:荒井遼
舞台監督:福澤諭志
制作:梶原千晶 長谷川きなり ・ 串田明緖
宣伝絵画:平松麻
宣伝写真:串田明緖
宣伝デザイン:GRiD CO.,LTD.  
企画・製作:フライングシアター自由劇場
主催:(有)自由劇場


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6月N響定期は日本人「若手」指揮者競演 ~原田慶太楼のオール・スクリャービン・プログラム~

2024-06-11 07:46:09 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

今月のN響定期は「若手」日本人指揮者による3本立て。どれも魅力ある共演者と組み合わせた楽しみな演奏会が続きます。

先頭バッターは原田慶太楼さんで、プログラムはスクリャービンの初期の作品から3本。最初の「夢想」を除いては、過去にN響定期で聴いたことがありますが、残念ながらあまり記憶に残っていません(ピアノ協奏曲は指揮がヴェデルニコフさん、ピアノがコロベイニコフさん。交響曲2番がパーヴォさん)。ピアノ独奏の反田さん効果か、このマニアックなプログラムなのにNHKホールは完売です!

反田恭平さんは、ご自身でオーケストラ立ち上げたり、ラジオのパーソナリティ等も行い、幅広く活躍されてます。今回のスクリャービンのピアノ協奏曲は初めての演奏とのことですが、微塵も感じさせない堂々たるものでした。楽曲もスクリャービンでも初期の作品と言うことで、耳になじみやすいものです。ショパンの影響を強く受けているということが、プログラムノートに書かれていましたが、ショパンの優美さに、さらにロシア的な雄大さを感じる音楽でした。反田さんのピアノは打鍵が強いのか、優しい弱音も含めて3階席迄はっきりと音が届きます。不覚にも第2楽章はオーケストラとピアノの絶妙なアンサンブルの美しさにちょっとウトウトしてしまったほど。第3楽章はロシア的なスケール感一杯の聴きごたえ満点の演奏でした。

後半の交響曲第2番は、5楽章構成ですが、第1と第2楽章、第4と第5楽章は続けて演奏されるので、3部構成とも言えます。第2楽章の美しさはとびきりで、うっとり。第4、5楽章は畳みかけるスケール感一杯の音楽。楽曲としてはやや冗長に聞こえてしまうところはありましたが、原田さん指揮のN響は、集中力途切れることなく充実した演奏です。フルート、クラリネットのソロにも耳をそばだてます。

原田さんとN響のコンビに接するのは3度目ですが、相互に信頼感が確立して安定した関係になっている印象を持ちました(最初に見た時は原田さんが随分と緊張されていたのが、よくわかったぐらい)。続く、沖澤さん、鈴木さんとの聴き比べも楽しみです。

定期公演 2023-2024シーズンAプログラム
第2013回 定期公演 Aプログラム
2024年6月9日(日) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

曲目
スクリャービン/夢想 作品24
スクリャービン/ピアノ協奏曲 嬰ヘ短調 作品20
スクリャービン/交響曲 第2番 ハ短調 作品29

[アンコール曲]

6/9:ショパン/マズルカ 第34番 ハ長調 作品56-2
ピアノ:反田恭平

指揮:原田慶太楼
ピアノ:反田恭平

 

Subscription Concerts 2023-2024Program A
No. 2013 Subscription (Program A)
Sunday, June 9, 2024 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Program
Scriabin / Rêverie, Op. 24
Scriabin / Piano Concerto F-sharp Minor Op. 20
Scriabin / Symphony No. 2 C Minor Op. 29
[Encore]
June 9: Chopin / Mazurka No. 34 C Major Op. 56-2
Piano: Kyohei Sorita

Artists 
Conductor: Keitaro Harada
Piano: Kyohei Sorita


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