環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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日本の「温暖化懐疑論」という現象(1)

2008-09-24 11:07:23 | 温暖化/オゾン層
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今日と明日の2回に分けて、この「温暖化懐疑論」について、私の考えまとめておきます。まず、お断りですが、私は複数の大学で「環境論」を講じ、その一環として「気候変動問題への対応政策」(国際的には気候変動という言葉が主流、日本ではなぜか地球温暖化あるいは単に温暖化が定着、今日の議論は素人の議論なので、2つの言葉を混用する)に興味を持ち、スウェーデンと日本の温暖化への対応政策の相違などを講義しています。

私は温暖化の専門家でもなければ、研究者でもありませんので、「温暖化問題」へ特化して議論しているわけではありません。その意味で、私は「温暖化問題」の素人です。ですから、ここでの議論は、温暖化問題の素人が最近、雨後のタケノコやキノコのように唐突に登場した日本の科学者の「温暖化懐疑論」という少々奇妙な現象(私にはそのように感じられます)に対する一市民の考えを率直に示したものとご理解いただければ幸いです。


●「私の環境論」における「温暖化」の理解

「化石燃料の使用により大気中のCO2濃度が増えると、地球が温暖化する」という仮説を最初に唱えたのはスウェーデンの科学者スバンテ・アレニウスで、1896年のことでした。

この112年間に「世界の経済状況」と「私たちの生存基盤である地球の環境状況」は大きく変わりました。112年前にスウェーデンの科学者が唱えた仮説がいま、現実の問題となって、私たちに「経済活動の転換」の必要を強く迫っています。

厳密にいえば、「温室効果」は「環境問題」ではありません。オゾン層の存在とともに、地球上の生命が生存できるかどうかにかかわる本質的な要因です。地球の大気中に水蒸気とCO2がなかったら、地球の平均気温は現在の平均気温(15℃)よりおよそ33℃低いマイナス18℃で、地球は氷結していたことでしょう。

経済活動の拡大、つまり化石燃料の大量消費にともなって排出されたCO2が増えたことによって温室効果ガスの排出が増加し、温室効果が高まったことが、「環境問題」なのです。過去150年にわたる経済活動が、大気中のCO2濃度をおよそ30%上昇させ、地球の平均気温は20世紀の100年間に、およそ0.5℃上昇しました。気温の上昇はとくに、20世紀最後の25年間に加速されています。

温暖化の原因には、人間の意思ではコントロールできない太陽の活動などの「自然的要因」と人間の意志でコントロールできる温室効果ガスの排出などの「人為的要因」があると言われています。温室効果ガスには、水蒸気、CO2、フロン、メタン、亜酸化窒素などがあり、とりわけ水蒸気がいちばん大きな効果を持っています。しかし、人間の意思でほとんどコントロールできない水蒸気を除けば、残りの温室効果の大部分がCO2によるとされています。CO2の大気中濃度は、産業革命以前には270ppmだったのに、1987年には350ppmを超えるほどに増えています。亜酸化窒素、メタン、フロン、地表レベルのオゾンなども強力な温室効果ガスですが、大気中濃度は高くありません。 

ですから、温暖化をくいとめるために大気中のCO2の濃度を増やさない対策がとられるのです。CO2は炭素が燃えてできるものですから、なるべく炭素を燃やさないようにすること、すなわち化石燃料の消費を抑えることが必要なのです

すでに1990年の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第1次評価報告では、「温室効果ガス濃度を現状に安定化するには、寿命の長いCO2、亜酸化窒素、フロンなどの人為的排出量を60%以上、メタンを15~20%、ただちに削減する必要がある」とされています。


●最新のIPCCの報告書は 

すでに皆さんもご存じのように、地球温暖化の「科学的根拠を審議するIPCCの第1作業部会」は2007年2月1日に「IPCC第1作業部会報告案」を承認し、翌2日に「IPCC第1作業部会報告」を公表しました

この報告書では「温暖化が確実に進み、人間活動による温室効果ガス排出が要因の可能性がかなり高いこと」を確認し、最終的には90%を超す確率であることを示す「人為起源の可能性がかなり高い」と表現しています。

次の図をご覧ください。これは、前述の報告書の公表のおよそ2週間前に「「IPCCの第4次報告書案の概要」を報じた1月19日の毎日新聞に掲載された解説記事です。




●環境図書売り上げベスト10は「温暖化懐疑論」が花盛り

そこで、次の図をご覧ください。


こちらは、私が購読している「環境新聞」(2008年9月3日)の12面の環境図書館の欄に掲載された最新の「環境図書売り上げベスト10」です。なぜか日本では、 「IPCC第1作業部会報告」で終止符が打たれたはずの 「温暖化懐疑論」が花盛りのようです。

私は、このベストテンに登場する「偽善エコロジー」(武田邦彦)、「科学者の9割は『地球温暖化』CO2犯人説はウソだと知っている」(丸山茂徳)、「『地球温暖化』論に騙されるな!」(丸山茂徳)を発売直後に購入し、読んでおりました。また、このベストテンには載っておりませんが、同じく地球温暖化懐疑論である「『暴走する地球温暖化』論 洗脳・煽動・歪曲の数々」(武田邦彦、池田清彦、渡辺正、薬師院仁志、山形浩生、伊藤公紀、岩瀬正則 著 文芸春秋 2007年12月15日 第1刷)も購入し、読みました。

このベスト10の著者のうち、武田邦彦、丸山茂徳、伊藤公紀、渡辺正、池田清彦、養老孟司および赤祖父俊一の諸氏は、その著書などに紹介されている略歴によれば、大学の理学部あるいは工学部(武田さんは教養学部)出身で、現在は大学の理学系あるいは工学系の教授(池田さんは国際教養学部)、名誉教授、あるいは大学の医学系の名誉教授です。ですから、私のような一般市民の感覚ではまさに “科学者”、“専門家”であることは間違いありません。著者の中には、著書で自ら科学者であることを強く主張している方もおられます。 

一昨日の毎日新聞が丸山茂徳さんを紹介しています。




なお、この環境図書月間売上ベスト10にはありませんが、日本の環境問題に対する対応に疑義を唱えた一般向けの著書2点をこのブログでも取り上げましたので、次の関連記事をご覧ください。

関連記事

同じ情報を与えられても解釈は異なることがある(2007-10-11) 

武田さんの「環境はなぜウソがまかり通るのか」と槌田敦さんの「環境保護運動はどこが間違っているのか」(2007-10-14)


槌田敦さんが理解するスウェーデンの原発事情(2007-10-20) 


-次回へ続く-



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