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2008年のODA実績 総額:スウェーデンは日本のおよそ半分、GNI比:1位、日本は21(最下位)

2009-04-02 14:28:46 | 政治/行政/地方分権
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OECD/DAC(OECD開発援助委員会)は2009年3月30日、 「Development Aid at its highest level ever in 2008」と題した調査結果を公表しました。委員会加盟の22カ国のODA実績です。
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2008年、OECDの開発援助委員会の加盟各国からの総ネットODAは10.2%増加し、1、198億米ドルに達した。これは過去最高の援助額である。全加盟国の国民総所得(GNI)比の平均は0.3%であった・・・・・
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これを受けて、スウェーデン外務省は2009年3月31日、「Swedish development assistance highest in the world」と題したプレスリリース(報道機関向け資料)を出しました。その要旨は次のようです。
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OECD開発援助委員会(OECD/DAC)は加盟の全メンバー国からの開発援助統計(暫定値)を公表した。国民総所得(GNI)比でみた2008年のスウェーデンの援助額は0.98%で、世界最高であった。
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また、日本外務省も2009年3月30日、 「DACによる2008年(暦年)の各国ODA実績(暫定値)の公表」と題するプレスリリースを出しました。

OECD/DACが公表した資料、スウェーデン外務省および日本外務省が出したプレスリリースはそれぞれの立場と考えを反映していて興味深いものですが、ややわかりにくいところがあるのはやむをえません。このようなときはOECD/DACの資料に添付されている次の2つの図を見れば、一目瞭然でしょう。

なお、ODAの議論をするとき注意することは、OECD/DACが公表する「ODA実績」は支出純額(Net)ベースだということです。純額(Net)というのは、援助国から途上国に流れたお金から、途上国から援助国に戻ってきたお金を引いた額という意味です。これに対して、単純に援助国から途上国に流れたお金だけを集計したものをグロス(Gross)といいます。

 

上の図からすぐわかることは、日本は93億6000万ドルで5位、スウェーデンは47億3000万ドルで8位、人口比では両国はおよそ12倍ですが、ODA純額の比ではわずか2倍にすぎません。さらに、下の図から国民総所得(GNI)比という判断基準では、当然なことながら、両国は両極端に位置しています。

日本とスウェーデンを比較するときに必ずと言ってもよい「日本は1億2000万人だが、スウェーデンは900万人の小国なので・・・・・(比較にもならない?)」という識者はこの現状をどう説明するのでしょう。

たとえば直近の話では、『週刊ダイヤモンド』(特大号 2009年4月4日)の「Part3 激論 これからどうなる? 日本はスウェーデンになれる?」(p145~145)で、神野直彦さん(東京大学教授)と八代尚宏さん(国際基督教大学教授)討論しています。「スウェーデンと日本の違いはどこにありますか」という問いにお二人が答えた後、「ほかに違いがありますか」という編集者(?)のさらなる問いに、八代さんは「・・・・・そして、やはり人口の違いです。スウェーデンの人口は900万人前後で共同体的なまとまりを成立させています。だから、人口規模の大きな日本がスウェーデンモデルを導入するには地方分権が不可欠です。」と答えておられます。

仮に、司会者がこの2つの図を前に同じような質問をしたら、八代さんはどう答えるのでしょう。八代さんはやはり、この歴然たる相違を人口の大小で説明できるでしょうか。別の理由を探すか、沈黙してしまうかのどちらかでしょう。私は人口の大小が問題になるのは、「解決すべき問題」に対して解決のための考え方や手法が同じ場合だと思います。考え方と手法が同じであれば、一般論としては人口が少ない方が有利だといえると思います。しかし、この例で言えば、日本とスウェーデンのODAに対する考え方や国の目標に大きな相違があるのです。


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