環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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混迷する日本④ 20世紀の企業倫理・企業観が招いた「低い古紙配合率」

2008-01-18 17:48:29 | 環境問題総論/経済的手法
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昨日、私の環境論の根底にある「今日の決断が将来を原則的に決める」という経験則について、この国の将来の方向性、つまり、「地球温暖化対策」にかかわる大きな話をしました。今日は、「今日の決断が将来を原則的に決める」という経験則を身近な例で検証してみましょう。10年前の決断が今日の困った状況を作り出してしまった例です。

昨日の朝日新聞の一面トップの記事を参考にします。


この事件そのものはマスメディアがいつものパターンで報道しておりますので、そちらに任せます。重要なことは事件を起こした製紙会社が再生紙の年賀はがきの品質重視のために、およそ10年前に「契約で決められた年賀はがきの古紙配合率40%」を契約の変更なしに、社内で勝手に配合率を低くして「年賀はがきの品質を保った」ということです。

つまり、「10年前の社内の決定が今日の企業の信頼失墜の原因となった」という事例です。同業他社も同じような状況のようですので、「業界で」ということになるのでしょう

朝日新聞の35面に、「偽装 リサイクルでも」、「配合率操作、10年以上 日本製紙」、「古紙表示 申告任せ」という見出しをつけた関連記事があり、この分野の専門家3人が次のようなコメントを寄せています。 


環境分野の専門家という立場でコメントすれば、このようなコメントになるのかもしれませんが、このようなコメントはことの本質を突いているとは、私には思えません。問題を起こした企業の言い分を読みますと、私はもっと深いところにこういう事態になった理由があると思います。この記事の中に「同社(日本製紙)は92年ごろから古紙配合率を無断で下げたという。理由を、ごみやインクの固まりが増えるという『再生紙の品質問題』と説明した」という記述があります。ヒントは「92年ごろから古紙配合率を無断で下げた」「再生紙の品質問題」です

バブル崩壊以前の日本の企業が世界の市場で大成功をおさめた理由は3つありました。次の図が示しますように、その一つが「品質」でした。 

バブル崩壊までの日本企業は公害防止には関心がありましたが、環境問題には冷淡でした。1988年ごろから日本の環境行政が、それまでの「自然保護行政」と「公害行政」に加えて「地球環境問題」という新たな日本的な概念を加え、「公害対策基本法」を「環境基本法」に引き継いだのが1993年でした。ですから、今回の事件は環境の問題というよりも、日本の製紙業界が20世紀の企業としての慣習を引き継いできただけのことだと思います。

この事件が示唆していることは、日本の一流企業でさえも一部の企業を除いて、「CSR(企業の社会的責任)」や「EPR(拡大製造者責任)」が問われる21世紀に入った今なお、「20世紀の企業倫理や企業観」で製品を作り、市場に供給していたことが明らかになったということではないでしょうか。



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