環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

「安心社会実現会議」の発足と初会合、私の期待に応えてくれるだろうか?

2009-04-15 08:40:34 | 政治/行政/地方分権
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このブログを見てくださっている方々はご存じでしょうか。このブログのタイトル(画面の上部をご覧ください)が

「経済」「福祉(社会」「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ 

であるということを。

ひょっとすると、私のブログのテーマに対する「この国の答え」が出てくるかもしれないという淡い期待を抱かせるような会議「安心社会実現会議」(いつになく目的を明確にしたストレートなネーミングの会議ですが)が内閣官房に設置され、その初会合が4月13日に開かれたそうです。

「治療志向の国」日本の政府が唐突に設置を決めたわけですから、事態が大変に深刻なのでしょうけれども、会議のメンバーを見るとその多くが  「これまでの成長路線を支えてきたような方々」とお見受けするのですが、ここは、とにかく、大いに期待し、「6月のまとめ」を待ちましょう。

今回の会議の委員の方々の中で、注目されるのは宮本太郎さんかもしれません。宮本さんは、今やスウェーデンの福祉制度を語る第一人者で、私のこのブログでも宮本さんの研究の一端を紹介したことがあります。

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そして、4月13日にこの会議の初会合が開かれました。

●安心社会実現会議の初会合



ここでもう一度この会議の議題を確認しておきましょう。

上の記事によれば議題には、
①日本が目指す安心社会の全体の姿、見取り図を示す
②雇用、医療、年金、介護、子育て支援のあり方や政策の優先順位を提示する―
を挙げたと、妙に具体的です。

6月のまとめでは、この会議の委員の方々の「これらの議題に関する基本認識」が明らかになるでしょうし、麻生首相、与謝野財務・金融・経済財政担当相、河村官房長官など「政府のリーダーの基本認識」も知ることができるでしょう。麻生首相の持論とも思える「中福祉・中負担」という概念がどのような(どの程度の)ものかも明らかになるかもしれません。



以下は余談です。

戦後60年余の歴史の中で、ドイツ共に、日本とスウェーデンは経済的に大成功をおさめた代表的な国だったと思います。経済的な成功の原動力はそれぞれの国の歴史や文化、社会に対する考え方などの相違により、一様ではありません。

ここで、両国が経済的に成功した原動力を考えてみましょう。いろいろな理由が考えられますが、私は両国の発展の原動力は同じではなく、むしろ正反対だったと思っています。キーワードは「不安」です。スウェーデンは公的な力によって、つまり社会システムによって、国民を不安から解放するために安心・安全・安定などを求めて経済的発展を進め、「生活大国」をつくり上げたのに対し、日本は不安をてこに効率化・利便さをもとめて「世界第2位の経済大国」と呼ばれるまでに経済的発展をとげたと私は考えています。

●長期単独政権の成果:社民党44年、自民党38年

 ヨーロッパで最貧国であったスウェーデンは社民党が1932年に政権についてから福祉国家の建設をめざし、1976年の連立政権誕生までの44年間、社民党の長期単独政権を維持してきました。ですから、現在の福祉国家は社民党政権の下で築かれたものです

この福祉国家ははやりの言葉で言えば、「生活大国」と呼んでもよいと思います。スウェーデンは、1813年のナポレオン戦争以来、200年近くまったく戦争に参加してきませんでした。この事実は今日の先進工業国の歴史を返りみる時、おどろくべきことと言わざるをえません。

一方、日本は「富国強兵」「殖産興業」を旗印に、アジアの一農業国から欧米に追いつくことを目標に努力を重ね、“アジアの大国”になりました。そして、1945年に太平洋戦争(第二次世界大戦)に突入しました。戦後は官民挙げての努力の結果、世界が賞賛する現在のような経済大国となったのです。戦後の日本の経済発展は自民党の38年間にわたる長期単独政権の下でなされたものでした。要約すれば、社民党の44年にわたる長期単独政権が「福祉国家スウェーデン」をつくり、自民党の38年にわたる長期単独政権が「経済大国」日本をつくったのです。

スウェーデの社民党政権が党の綱領に掲げた「福祉国家の建設」を見事な形で実現したのに対し、日本の自民党は「福祉国家の完成」を党の旧綱領」(1955年に制定され、2005年の小泉政権で新綱領に改訂されるまで50年間)で掲げておきながらなんと 「非福祉国家」を完成させたのです。そして、今、再び「中福祉・中負担の社会」を築こうとしているかのようです。  
 
●これからの20~50年

 今後50年を展望すると、この2つの国の将来は大きく異なるでしょう。日本はスウェーデンと技術面では大差がありませんが、 「将来の社会に対する考え方」では、両国の間に大きな落差があるからです。私たちの行く手には、「大量生産・大量消費・大量廃棄に象徴される20世紀型産業経済システム」の根幹を揺るがす“資源・エネルギー問題”や“環境問題”という世界共通の巨大な壁が立ちはだかっています。この壁を乗り越えるには、技術的な対応に加えて、社会システム、慣習、価値観の変更などの社会科学的な変革が必要となります。

技術一辺倒できた日本にとって、社会科学的な変革は最も苦手とするところです。
その前提となる「社会的な合意形成」は制度的にも、意識的にも不得意な部分です。逆に、日本の不得意なところはスウェーデンが得意とするところでもあります。