環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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雑誌「世界」(2009年1月号)の「特集 大不況」に登場する識者の環境意識、ほとんどなし

2008-12-08 18:35:00 | 環境問題総論/経済的手法
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11月29日のブログ「私の環境論 経済危機と環境問題のとりあえずのまとめ」 で、 「21世紀の経済成長」の最大の制約要因であるはずの「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点がインタビューを受けた10人の識者に意識されているかどうかを調べた結果を掲げました。

これまでに登場した10人の識者のうち、21世紀の「世界の経済危機の行方」を論ずる際に、「資源」、「エネルギー」および「環境」という実体経済を直接支えている要因に触れた識者は経済学者のスティグリッツさんと元首相の中曽根康弘さんのお二人しかおりませんでした。

今日発売の岩波書店の雑誌「世界」の2009年1月号が「大不況-いかなる変革が求められているか?」を特集しています。特集のタイトルに魅かれ、購入し、読んでみました。この特集では著名な学者やマスメディアでおなじみのエコノミストが登場しますので、「21世紀の経済成長」の最大の制約要因であるはずの「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点が意識されているかどうかを調べてみました。

この特集は141ページから223ページまでの80ページが割かれています。内容は次のとおりです。

対談 いま、ケインズを読む意味
宇沢弘文(東京大学名誉教授)、間宮陽介(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はなし。

改めて問う、小泉-竹中路線とは何だったのか
高杉 良(作家)
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はなし。

世界不況vs家計 貯蓄こそ防御の王道
荻原博子(経済ジャーナリスト)
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はなし。

シンポジウム:経済危機の深度と震度-いかなる政策が有効か

第Ⅰ部 危機はなぜ起きたのか、その影響は    

    報告 世界金融危機の進展と世界経済へのインパクト 河合正弘(アジア開発研究所所長)
    討議 小野善康(大阪大学社会経済研究所教授)、河合正弘(アジア開発研究所所長)、浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)、
        原田 泰(大和総研常務理事チーフエコノミスト)、水野和夫(三菱UFJ証券チーフエコノミスト)、小峰隆夫(法政大学社会学部教授 司会)「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はなし。

第Ⅱ部 政策的対応はどうあるべきか
    報告 長期景気循環と政策の考え方 小野善康(大阪大学社会経済研究所教授)
    討議 
討議の中で、小野善康さんが「だから、私が何年も前から主張しているのは環境です。環境投資は生産性を上げない。けれども雇用を作って、国民の生活は快適になる。しかも、今後、世界は絶対に環境投資が必要ですから、重要な戦略産業となる。いまでこそ、国土交通省はいろいろ批判されていますが、高度成長期の建設省や運輸省は日本の発展の星だった。そこで土木技術にものすごい産業政策をやったわけで、日本は世界一の土木技術を持った。いまでは途上国援助でも土木産業が多い。まさにそれを環境でやれというのが私の主張です。」と述べておられます。 

討議の中でただ一人、小野さんが「環境の視点」を意識されていることを私は大いに評価しますが、小野さんの考えが「将来も今までのような経済成長を維持しつつ、環境への投資を積極的に行う」というのであれば、私の小野さんに対する評価は急落します。環境への視点があるとは言っても、この発想は90年代に十分な議論がないまま日本社会に定着してしまった感がある「エコロジー的近代化論」の発想の域を出ていないと思うからです。 

関連記事
 
エコロジー的近代化論(環境近代化論)(2007-03-14) 

エコロジー的近代化論の問題点(2007-03-15) 

ドイツの環境政策を支える「エコロジー的近代化論」(2007-03-16) 


第Ⅲ部 日本経済はどうなるか
    報告 世界金融危機の日本への影響 アメリカなき世界をどう生きるか 原田 泰(大和総研常務理事チーフエコノミスト)
    討議
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はなし。

第Ⅳ部 世界経済のパラダイムが変わるのか 
    報告 金融危機が突きつけるもの 浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)
    討議
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はなし。

つまり、この80ページにおよぶ特集「大不況 いかなる変革が求められているか?」の中で、わずかにお一人、大阪大学の小野さんだけ「環境投資」の重要性を主張されているにすぎないのです。

この特集の中の高杉良さんの論文「改めて問う、小泉-竹中路線とは何だったのか」の「はじめに」を取り上げます。

この論文では、論文のタイトルから容易に想像できますように、小泉純一郎・元首相、竹中平蔵・元経済財政担当大臣への厳しい批判とニュースキャスターの田原総一朗さん への厳しい目が向けられています。高杉さんは「月刊現代」(2002年12月号)でも「憂国提言 竹中大臣を即刻クビにしろ」という論文を書いておられますので、「世界」(2009年1月号)の批判論文にも迫力があります。

私のブログでも過去に、 「環境問題の視点」からこの3人を取り上げたことがあります。

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