環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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環境問題を忘れた「早急な金融危機の解決策」は、更なる「大危機」を招く?

2008-12-13 19:22:21 | 環境問題総論/経済的手法
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12月8日のブログで、雑誌「世界」(2009年1月号)の「特集 大不況-いかなる変革が求められているか」に登場する識者がこのテーマを議論するときに、「21世紀の経済成長」の最大の制約要因であるはずの「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点がどの程度意識されているかを調べてみました。その結果、この80ページにおよぶ特集の中で、わずかにお一人、大阪大学の小野さん が「環境投資」の重要性を主張されているにすぎなかったのです。

この特集の趣旨は次のように書かれています。

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米国の住宅バブル崩壊に端を発した金融危機は、瞬く間に世界に広がり、米欧を中心とした金融機関の損失は計5.8兆ドル(約550兆円)、損失比率は17.9%に及ぶという試算もある(みずほ証券08年11月24日)。各国政府・中央銀行は協調して、金融機関への公的資金導入、政策金利引き下げなどを矢継ぎ早に行い、金融システムの安定化を図っているが、混乱は収まっていない。

金融危機は実体経済の危機に転化し、日米欧の先進国経済はかつて経験したことのない同時マイナス成長の時代に入ろうとしている。GMなど米国の自動車産業だけでなく、トヨタなども販売不振に陥り、09年3月の業績予想では、売上高2兆円のマイナスという。モノが売れなければ貿易が急減し、経済が縮小すれば倒産が増え、失業率が上昇する。米国では10ヶ月で110万人が職を失った。

まさに未曾有の大不況の到来である。折しも、変革(チェンジ)を掲げたバラク・オバマ氏が次期米国大統領に選ばれた。変革は8年前のブッシュ時代に対してだけでなく、70年代以来30年にわたった新自由主義の時代に対する決別と転換でなければならない。グローバルな危機には、グローバルな対応が必要とされている。人々が餓えたり、基礎的な医療や教育が受けられなかったり、家を失って彷徨ったり、家族が離散せざるをえなかったりすることがないようにするために-いかなる変革がいま、必要なのか。
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この特集記事が模索している「答え」を見つけるために掲げた上記の特集企画者の基本認識「70年代以来30年間にわたった新自由主義の時代に対する決別と転換でなければならない。グローバルな危機には、グローバルな対応が必要とされる」は大変明確であり、的を射ていると思います。

しかし、この特集で「金融危機」について「いかなる変革がいま、必要なのか」を問われている日本の識者の中に、「資源・エネルギー、環境問題」の意識がきわめて薄いことは大問題です。けれども次の報道をみれば、やむをえないことかもしれません。


 


「これまで、日本の環境対策は、世界の最先端を走っていると思っていた」とおっしゃる小村武・日本政策投資銀行総裁の“率直な驚き”は印象的です。この驚きこそ「日本の政・財界が共有している意識」といってよいでしょう。この事実は、環境問題に対する日本のリーダーの考え21世紀になってもいまだに「公害の域を出ていないこと」を見事に証明しています。

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日本の「金融と環境問題のかかわりの意識」と「それに基づく行動」が国際社会の中で大変遅れていることがおわかりいただけるでしょう。

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同じようなことが「省エネ」という概念にも見られます。「日本の省エネ」と「国際社会の省エネ」の相違を次の記事でご確認ください。


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2 コメント

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こんにちは (しゅとう)
2008-12-15 16:34:55
小澤先生、こんちは!
雑誌世界では資源エネルギー問題への意識が小野さん一人しかいなかったということですが、後で言われているように僕は、「市場原理主義との決別」ということに気がつくだけでも少し前進できたのかなという感じもします。小澤先生の視点を要求するのは少し厳しいのかなという感じもしていました。
実は僕も持続可能な社会への確信が自分の言葉としてまだ持てていないのですが、小村さんや末吉さんの感じた驚きが日本の常識になるには、自分もいろんな人との議論が必要なのかなという感じがしています。
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どうコメントしたらよいのか (小澤)
2008-12-18 17:15:15
しゅとうさん、
ごめんなさい。いただいたコメントにどうコメントしたらよいのかわかりません。

このブログでとにかく私がお伝えしたかったことは、世界第2位の経済大国のそれぞれの分野のリーダー的識者、今回の場合は、一般人ではなくて、日本の社会の中で国際社会の動きに明るそうな立場にある方々(銀行の取締役や総裁)が「率直な驚き」(日本の認識が遅れていたことに気づいたという)を示している点です。


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