ううむ、やっぱり踏んでしまいました、警戒していたのに。
例の古典幾何学本の翻訳の話。数学用語と日常用語の区別です。有名なのがat mostで、日常語は「せいぜい」で、数学用語は「高々」です。分かりやすいからとせいぜいを使う人はいますが、これを数学用語と捉えないと議論が大混乱に陥ります。ですから、普通は高々を使う。
定訳というのがあって、強制ではありませんが従わない場合は覚悟が必要です。
で、何かというと群論の用語でthe complete symmetric group。直訳は完全対称群で、しかし、あまり一般的な数学用語では無いみたいです。要するに裏表というか鏡像(左右)を考慮した対称性で、対立語は回転群(rotation group: 回転のみで裏返さない)です。これはおそらく著者の個性的な表現ですが、定義はすぐに分かります。数学では裏返さない方が特別(special)で、表裏のどちらも考慮するのが普通扱いです。
つまり、completeの所を日常語と私は思っていたわけで、慌てて前の方の章に戻って完全対称群と書き直すことになりました。
あ、余計なこと。鏡は左右は反転しますが、なぜ上下は反転しないか、という有名な、おそらく多分パラドックス。あれこれ考えるのが面白いので、答えは書きません(ヒント: 鏡の置き方)。幾何学では鏡映操作は当たり前の操作なので、もう大変なことに。ただし、この時期までの古典ではキラリティ、つまり左右非対称性はあまり話題になっていません(触れてはいる)。
左右非対称の分子の分析が話題になったのは(生物学が発達した)つい最近のことで、21世紀ならではの話題と言って良いと思います。
数学界ではさすが、この著者のお弟子さんに当たる方(英国人)がそれはもう丁寧にキラリティを研究しています。分かりやすい著作があります(ただし英文。とはいえ図版が多いのですぐに理解できる)。
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