日曜日、雨降るギャラリー

2013-10-20 | 日記

今日は雨降りの静かな日曜日になった。ガラス窓が雨に濡れていて、ブラインドが肌寒い外光を反射している。雨なので、今日はお客さんが来るかどうか。聴いているNHKFMからは、カラヤン指揮ベルリン・フィルの 『 悲愴 』 である。解説者の話では、カラヤンはこの曲が相当好きだったらしく、録音だけでも七回に及んだそうだ。

     君待ち侘びてはや幾時

     艷なる君の姿を見ず

     胸に覺ゆるは甘き傷

     など君の來ますこと遲き  ( 九鬼周造・詩 「 ルクソオルの夕 」 より )

今日もまた本をダンボールに詰めて閉店の準備をする。詰めながら気になる本があると、どうも見てしまうから中々はかどらない。はかどらない分、また面白い文章に出会うから、これもまた良きことかな、である。上記の詩文もそうである。

        

九鬼周造 ( 1888-1941 ) の哲学論文は、いくつかの論文を除いては、理系論文のように、僕のような素人には理解不能である。であるが、折角 『 九鬼周造全集 』 ( 岩波書店発行 ) の全12巻を蔵書してあるのでしっかり読んで見たいものである。岩波文庫には有名な論文 『 「 いき 」 の構造 』 が入っていて、そういえば 『 随筆集 』 もあるが最近では 『 偶然性の問題 』 もこの文庫に入った。また、彼の師であるハイデッガーについての論文 「 講義 ハイデッガーの現象学的存在論 」 ( 『 全集 』 の第10巻 ) などには一度挑戦してみたいものの一つであり、読破することが、僕の残り少ない人生の夢の一つである ( 笑 ) 。そこでここに掲載したような、哲学者にして詩人又は歌人・九鬼周造の詩や歌がまずは取っ掛かりになるのであるが、 『 巴里心景 』 ( 絶版 ) などは親しみやすい著書であり、パリ遊学中のエトランジェの憂愁がただよっている。全集の 「 短歌ノート 」 から歌二首を書いて見る。一首目には 「 『 偶然性の問題 』 を著す 」 という詞書がある。

      たまきはるいのちのはずみ灰色の言葉に盛りて書は成りにけり

      わが胸の幽けき響聞く人のひとりは欲しき冬の夜かな