この写真も昨日撮ったもので、日本海に水没寸前の太陽氏である。
太陽が沈むごとに視界が紫色になって行った。そういえば僕の隣の家の、今を盛りに咲いているコスモスの花もこんな色をしている。日が暮れて、薄紫色のコスモスがたくさん咲いていた。夕暮れの海はコスモスの花の色である。秩序とか調和とかいう宇宙のことを、英語では cosmos と言うが、またこの花の英語綴りも cosmos なのであった。コスモスの花も宇宙だったし、または宇宙もコスモスの花だった。
ところで、ここに 「 太陽氏 」 と書いたのは、若い日の瀧口修造の未完長編散文詩に 「 実験室における太陽氏への公開状 」 というのが念頭にあったからである。さっき漸く探しあてたので、その一節を紹介する。 M. Soleil! ( ムッシュー・ソレイユよ! )
… 太陽氏よ、君は空想ではない。意味ではない。無意味ではない。鳥ではない。人ではない。ぼくが記述のために疲れてまどろむ時驚くべきほど近くの水平線を宝船が通過する。ぼくは眠りに落ちた島のロビンソンであるのだろうか? ぼくはコダックのように、暗黒の鉱石となってあらゆる映像を夢みるのであろうか? …