海に吹く風

海の大好きな私
ここで皆さんとお話しましょう

日々思うこと、短歌についても書いていきます

道浦母都子

2008-10-06 20:07:26 | 短歌
 
無援の叙情

 ガス弾の匂い残れる黒髪を洗い梳かして君に逢いにゆく

 線路へと線路へと飛び降りる激しき群れに我も混じりつ

 騒乱罪適応されしニュース告げ10.21夜果てしなき

 調べより疲れ重たく帰る真夜怒りのごとく生理はじまる

 炎あげ地に舞い散る赤旗にわが青春の落日を見る

 神田川流れ流れていまはもうカルチュラタンを恋うことも無き

 明日あると信じて来たる屋上に旗となるまで立ち尽くすべし

 講堂に雪降る宵に我は来ぬ一つ青春を確かめるため

 どこかさめて生きてるようなやましさは我らの世代の悲しみなりき
 
 土曜日はバラの花束買う平安をいつしかわれも愛しはじめぬ


 
道浦母都子という歌人の名前と「無援の叙情」という歌集の名前を知ったのはいつだっただろう。
多分今から10年くらい前で、新聞に特集の記事があった。
全共闘世代で、あの大学闘争の時代のことを詠った「無縁の叙情」で世に出た歌人という説明で、でもその時は歌集を読んでみたいと思わなかった。

今から多分5年前あるトピで道浦母都子のことが話題となり、この人の歌集を読んでみたいと思った。
まだ短歌作るなどとは思っていなかった頃。

書店に「無縁の叙情」とその後の歌集「夕駅」(90年代)まで載った文庫本を買った。

「無援の叙情」を読むと短歌を鑑賞するというよりはあの時代にタイムスリップしてしまった。

ここに載せた2,3首は1968年の10・21の国際反戦ディーの日、学生のデモ隊が新宿駅から線路に乱入し、東京の交通が麻痺し、未明に騒乱罪が適応されたことを詠っている。
この事件に関連して道浦母都子も逮捕され、そのときのことも歌に多く詠われている。

この歌集によって道浦母都子は有名になり、ある時代を象徴する歌人となった。


ブログを作るようになって河野裕子の話題から彼女のことを思い出して、彼女の歌集を5年ぶりに読んでみた。
やっぱり冷静には読めない。
思っていることをまとめようと思っても出来ない。

はるか昔に過ぎたことを思い出して何になるのだろう。
でも同世代の人としての思い入れはある。

ところで道浦母都子は大阪在住で、私にとって身近な感じがする。
いつかどこかですれ違わないかなと思う。
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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
沙羅さん、こんにちは♪ (けい)
2008-10-08 00:19:51
 産むことを知らぬ乳房ぞ吐魯番の絹に包めばみずみずとせり
最初に知ったのはこの歌でした。不意に短歌を作ってみようと思った10年ほど前のこと。「産むことを知らぬ乳房ぞ」が衝撃でした。「吐魯番の絹」という言葉も新鮮で。とても好きな歌です。
私は全共闘世代の後の世代、大学時代にデモを考えた学生はいないでしょうね(私もですが)。そんな時代です。
「調べより~」「明日あると~」の歌もいいですね。
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けいさん (沙羅)
2008-10-08 08:02:44
この歌は哀しみを詠っているのに美しい歌ですね。
ナルシズムの香りもほどよく。
道浦母都子は子供が欲しくないわけではなかったけれど、恵まれなかった。

彼女の歌を読むとひとりで生きることを選択した自分への厳しさと寂しさも感じます。
また叙情で溶けずに残った硬い核みたいなものを感じます。
全共闘世代にとって、今は遠く違う道を歩もうと
あの時代のことは生きる原点みたいで、心の奥深くしまわれていても硬い核みたいなものがあって、歌にもそれは現れてしまいますね。

でも40代の頃の歌までしか知らないので、最近の歌はどうでしょう?

全共闘世代の次の世代は全共闘世代の<失敗>を見ているので、学生運動はしなくなったのですね(笑)
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どこかで (kei)
2008-10-09 00:14:47
道浦さんとすれ違ったりしたら、すてきですね~。
沙羅さんだったら、きっと自然に声をかけていらっしゃるのでは?

*全共闘世代の<失敗>を見て、ということではなく、全共闘世代のような“熱い心”がなくなっているのかな。というより、何かにに飼い慣らされて(?)おとなしくなっているのかも。(たとえば国とかマスコミとか)飼い犬の手を噛みたいけど噛めない人もいると思うけれど。。。
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おはようございます (沙羅)
2008-10-09 07:31:49
けいさんとこんなお話が出来て嬉しかったです。
ありがとう~
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岸上大作さん (雪香)
2008-10-10 19:30:06
こんばんは。

全共闘、というと岸上大作さんも思い出します。

道浦さんの歌と、同じ空気が通っていて、ときどき混同してしまいます。

『無援の抒情』というタイトルをみたとき、一瞬岸上さんの、



  血と汗と雨にワイシャツ濡れている無援ひとりへの愛うつくしくする


 これを思いました。

 ある激しい時代に直面し、奔流のように走り抜け、自爆した魂と、生き延びて「産むこと知らぬ」と苦さを含みながら、なおかつ成熟していった心との対比、味わい深いです。

 道浦さんと、同世代でいらっしゃるのですか。なおのこと、感慨は深いでしょう。

 ブログはエイジレスな環境なので、それでは、いままで気安いカキコやレスをしていたんですね、わたし。失礼しました。

 
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エイジレス (沙羅)
2008-10-10 21:22:21
ネットの世界はエイジレスで性別・現実の立場の違いも関係なくハートだけでお話できるのが気に入っています。
出来ればネットではずっとエイジレスでいたんですが、年齢がわかる書き込みを慎重に避けて行くのは好きでないから、思ったことを書いていればいずれ年齢はわかりますね。

雪香さんは私にもし娘がいればそれくらいか少し下くらいの年齢ですね。
失礼とはそういうことはないので、これまでと同様エイジレスのお付き合いをお願いしますね。


さて岸上大作の歌はどこかで引用された程度しか知りません。
学生運動をうたった歌の雰囲気は道浦母都子に似ていますね。
よくこの二人は比較されます。
彼は1939年生まれで1960年に21歳で自殺してしまいました。

つまり全共闘世代とは約10年のずれがあります。
全共闘世代が70年安保世代なら岸上大作は60年安保歩の時代の人です。

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