アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

豪快に突き進む勝利の行進!~新日本フィル定演

2021-02-22 19:00:00 | 音楽/芸術

今月最後の新日本フィル定演へと出向いてきた。

今回のプログラムは、ショパンのピアノ協奏曲、チャイコフスキーの第5交響曲という最近では最もポピュラーな楽曲が並ぶ。いずれも名曲中の名曲で、クラシック音楽が好きな方なら、どなたでも耳にしたことがあるのではないか。

アントンKにとっても、演奏会でこの楽曲を鑑賞するのは久しぶり。特に昨年から流行っているコロナ禍において、なかなか聴く機会がなかったことも事実だった。しかしこの演奏会で名曲呼ばれる所以は、確かにあると改めて思わされたのである。

今回のピアノソロは、新進気鋭の牛田智大で、ちょうど4年前に彼のリサイタルを鑑賞した体験があった。細身の身体から全身全霊で「展覧会の絵」を熱演したことが思い出されるが、今回の演奏は、さらに表現の幅が広がりを見せ、何とも情感溢れる演奏だったように感じた。特にショパンの美しいメロディをたしなめる様に、いわゆる繊細なピアノタッチの連続を熟し、聴衆は息を殺して神経を研ぎ澄まして聴くようなガラス細工のような演奏だった。これには、指揮者大友直人の想いもあったのだろうが、バックのオケをいつもより控えめに鳴らし、かなりソリストを前面に出した演奏と言えるのではないか。

後半のチャイコフスキーの第5交響曲では、その反動か最近聴く新日本フィルの演奏では、極端に鳴っていた演奏だったと思える。アントンKも、この楽曲には昔から思い入れがあり、最近こそご無沙汰になったが、昔は演奏会では好んで鑑賞していた楽曲だった。特に来日オケで取り上げた時は狙って鑑賞してきたもの。スヴェトラーノフも、生前来日して何度も演奏しているし、フェドセーエフやロジェストヴェンスキーなど、上げたら切りが無くなる。今回は、そんな昔の演奏を彷彿とさせるに値する内容だった。いつも雄弁な木管群は、さらに燃えていたし、フィナーレ楽章でのティンパニ川瀬氏の大袈裟なパフォーマンスは最高で、それこそミュンヘン・フィルの巨漢ザードロを思い出させたのである。そしてここでも、我がコンマス崔氏がやってくれた。どう考えても彼の情感際立った音色は、ロシア音楽を歌ったら特にマッチすると思えて仕方がない。各楽章そんなポイントは散見出来たが、今でも忘れられないのは、第1楽章の170小節から始まる副次主題の艶やかな音色だ。ここは、第1Vnが譜面上Pで始めるが、そのテーマの響きが延びること延びること。何度かの起伏を経て頂点へと向かう経過部は、何百と聴いてきたアントンKでも耳覚えがなく、この楽章ですでに気持ちが動揺してしまった。指揮台とコンマス席と対角線上の席を好んで鑑賞しているのは、指揮振りを観つつ、コンマス崔氏を含む弦楽器群の響きを聴きたいがためなのだ。そしてもっと言えば、オケ全奏で突き進む場面でも、弦楽器の細かい動きが聴き取れることにある。フィナーレ楽章コーダで、マエストーソになってから運命の主題をffで弦楽器が奏するが、問題はそのあと、テーマが金管楽器群に移ってからの弦楽器群の刻みがはっきりと聴きとれたのだった。アントンKは、この部分の響きが好きでいつもこの楽曲では注視してしまう。欲を言えば、もう一息テンポが緩いとさらに響きが広がるはずなのだが、指揮者の大友氏から、ここまでの演奏が聴けるとは思ってもみなかっただけに、大満足でホールを後に出来たのである。

それにしても、今回の指揮者大友直人氏とは、相性が良くはないと思っていただけに、とても嬉しい誤算だったのだ。今後ますます目が離せない存在になって欲しいものである。

2021年2月20日 新日本フィルハーモニー交響楽団

ルビー定期演奏会

ショパン         ピアノ協奏曲第1番 ホ短調  OP11

チャイコフスキー  交響曲第5番 ホ短調           OP64

アンコール

ショパン     練習曲第15番「雨だれ」

チャイコフスキー 弦楽セレナード ワルツ

指揮    大友 直人

ピアノ   牛田 智大

コンマス   崔 文洙

 

すみだトリフォニーホール



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