やたら被写体のド・アップに拘っていた時代の写真。
アントンKの場合、まだ当時は自分でどう撮影したいのかという、撮影の核のようなものが未熟で、仲間内からのアドバイスを真正直に実践していた時代だった。その最初のハードルが、ペンタ67での撮影であり、手に入れてから随分悩みながら撮影をしていたことが懐かしい。ブローニフィルムに白黒フィルムを装填し、10枚撮りのコマを大切に確かめながら撮影した日々はしばらく続いていたが、この癖の強い、けど決まった時の圧倒的な満足感はますますアントンKを釘付けにしていった。いつも同行していた身近な仲間内が、超望遠レンズの世界へと流されていく頃、短レンズで被写体を可能な限り大きく撮影したいという独自性が芽生え、このバケペンで被写体を大きく捕らえること一点に終始した時代がある。だから、この時期残された画像は、類似画像の習作が並び、これだけ時代を越えてきても画像の熟成は乏しいと我ながら思わざるを得ないのだ。
そんな中から今回1枚掲載する。メモには「カルチャートレイン1981」とだけ書いてあったが、翌日関ケ原で上り列車を撮影していることから、関西往復の団体イベント列車だったと推測される。ちょうどこの年から、リバイバル「つばめ」の運転が始まり、その走りの列車だったのかもしれない。天気が悪く、ただでさえ露出が稼げないで苦労するバケペンでは、撮影条件は最悪に近い日、懲りずに線路端にしゃがみ込み、ド・アップ写真を実践していた。視野率の悪いバケペンのファインダーを考慮しながら、1コマに賭けるスリルは、今思い出しても病みつきだったかも。現像後の気持ちの落差も上がり次第。全ての行程が楽しかった、と今だから言える。
1981-02-14 9103ㇾ EF58 61 「カルチャートレイン1981」 東海道本線:東戸塚-保土ヶ谷