アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

究極の選択!上岡のブルックナー第6 (1)

2018-04-21 20:00:00 | 音楽/芸術

昨日は床についても、どこか胸騒ぎがして寝つきが悪かった。ここ最近では、音楽会を終え帰宅後ここまで興奮しているアントンKも珍しいと自分でも思う。若い頃ならいざ知らず、この歳に及んでここまで頭に血が上るとは思わなかった。

昨日は新日本フィルのジェイド定演に行ってきた。音楽監督の上岡氏が振る演奏会は、可能な限り全て聴きたいと思っているし、コンマスが崔文洙氏ならなおさらだ。言わば彼等の演奏は、アントンKの中では、日本のオケ鑑賞の今や試金石になりつつある。数々の在日オケの演奏会に遭遇する中で、いつも彼等の演奏を頭に描きながら聴いてしまう。長年聴いていると、記憶から埋もれてしまう演奏会がほとんどだが、その時の印象を自分に正直に覚えていたいと思うのだ。そして回数を重ねても、同じように感じられる感覚を保ちたいものだ。

今回の定演では、ブルックナーの第6交響曲が演奏された。それも日を少しおいた特別演奏会でも同じプログラムの演奏があった。ブルックナーの第6というと、滅多に演奏されない交響曲で、初期の交響曲(ヘ短調・0・1・2番)もそうだが、今までできる限り実演に触れてきた。ブルックナーこそ実演に触れてこそ真価を問うことができると考えているアントンKだから、迷うことなく今回も2度足を運ぶ訳だ。

さて今回演奏されたブルックナーの第6交響曲だが、なんとヨーゼフ・ヴェナンディウス・フォン・ヴェス版という譜面が使用されていた。ブルックナーを聴く場合、常に問題視されるのが版の問題。しかし今回の第6に関しては、基本は原典版での演奏が通常で、版のよる楽譜の差異は無いものと思っていた。

このヴェス版とはどんな楽譜なのか?後でわかったことだが、1927年に出版されたものらしく、ロベルト・ハースが原典版として一連の交響曲をまとめ上げる以前のもの。ということは、ブルックナーが生前から弟子たちの意見を加味して改訂した譜面に近いということになる。ハース版、そしてその後のノヴァーク版を原典版とするのなら、第3で聴かれたエーザー版や、第5で有名?な悪名高きシャルク版と同じで、大幅なカットや、少しでも聴きやすくするようなアコーギクやデュナミークの追記、そして打楽器の追加などが行われた譜面ということになる。これは問題だ。この改訂版での第6交響曲の演奏は、(調べた訳ではないが)日本では初演のはず。そしてLP/CDを含めた録音まで含めても、残されてはいないのではないか。

この日アントンKは、演奏前うかつにもプログラムに目を通さず挑んでしまった。しっかりヴェス版とクレジットされていたのにもかかわらず、何も知らずに第6交響曲を迎えてしまったのだ。だから、全て聴き終えてからの衝撃はいつになく強烈で、直後が放心状態だったのだ。もちろん指揮者が上岡敏之だから、それなりの覚悟を持って鑑賞に挑んだのだが、聴き進むにつれて、「嘘だろ!ここまでやるのか・・」と心の声がしてくる。そして「いくら何でも・・」と気持ちがざわついてしまったのである。(続)